Column/Interview

10代にして、これほどまでハイレベルなBoom Bapを体現するラッパーがいただろうか。そう思わせるほどS-kaineの活躍、そのクオリティには目を見張るものがある。高校生ラップ選手権やハイスクール・ダンジョンでの活躍はサイドプロジェクトに過ぎない。
それらを引き合いに出すまでもなく、その実力を語るには彼の楽曲だけで充分だ。声質、ビートセンス、フロウ…どれをとっても余計な肩書のいらない一線級。2020/10/22には3rdアルバム『DUST S PURPLE MUSK』のCD盤発売、更に年明けには99曲入りアルバム(!)の発表も控え、その動きは止まらない。しかし一方で、真摯に音楽と向き合うこのアーティストは、それゆえの繊細さを併せ持つ。

「自分自身も外面は明るいんすけど…内面に持ってるネガティブな部分が曲に出て、でも自分のスタイルとしてはドープでいたいし…っていう葛藤が出てますね」

S-kaineの目指す頂き、そしてその輝き故に彼を取り巻く環境に何があるのか。




登場する主なアーティスト(順不同):
呼煙魔, OGRE WAVE, 9for, Silent Killa Joint, Fuma no KTR, RAWAXXX, ISSUGI, Tha Jointz, DJ SCRATCH NICE, GRADIS NICE, DJ GQ, ENDRUN
 
 
─まずはご自己紹介をお願いします。
 
S-kainê:
S-Kaineです、いま19歳です。
6年前くらいから活動を始めて、自分のレーベル・Back Down Junctionを作って音楽活動してます。
今はもう音楽だけで仕事してないんですけど、一応大阪・アメ村にあるPlanet Radioっていう、BOIL RHYMEのDJ MADJAGさんが経営してる店を手伝ったりもしてます。
そこはRAWAXXXさんが店長やってて。
 
 
それと並行して、音楽の専門学校にも通ってます。
レコーディング専攻でエンジニアやPAの技術を学んでて、これも通じて感性も磨けるかなと思って。
この辺のことを一通り学べば、自分でJuda名義でビートメイクもしてるので、音源制作に関する作業は全部完結出来るかなって感じです。
 
出身については、生まれも育ちも大阪の西成なんですけど、来年くらいにはアメ村の方に住もうかなと考えてますね。
それか新大阪とか。
新大阪はまだ全然HIPHOP的に開拓されてないし、レーベルの人たちともアクセス良いので、その辺に住むのもありかなと。
 
 
─元々音楽に興味はある方だったんですか?
 
S-kainê:
いや…そんなにですね。
元々は部活でスポーツとか頑張ってた方で、音楽大好き、みたいな感じではなかったんです。
HIPHOPに出会うまでは、お姉ちゃんの宇多田ヒカルや椎名林檎を流れで聴いてたとか、それくらいですかね。


─そこからどうやってHIPHOPに出会ったんでしょう?
 
S-kainê:
中学生だった2014, 5年くらいに…元々SALUとか有名どころの曲は聴いてたんです。
でもそれは中学生の間での「今イケてる曲」だから聴いてたくらいの感じで。
その頃高校生ラップ選手権とかも流行ってて、それを見て友達とサイファー始めたりもしてました。
でもそれも、エンタメとして楽しいからやってたみたいな感じで、HIPHOP自体にどっぷりっていう感じではなかったですね。
 
HIPHOPにガッツリハマったのは、間違いなくオニオンくん(Silent Killa Joint)の”BlAqDeViL”がきっかけです。
 


─”BlAqDeViL”のどういった部分が当時のS-kainêさんを捉えたのでしょう?
 
S-kainê:
まずその鬼気迫る声とか、自分の動きを映像に乗せた時の迫力とか、
自分自身の経験を歌詞にして歌う、みたいなところがめちゃくちゃインパクトがあって。
自分自身を主語にして、人に左右されないことが出来るんだ、って思いました。
 
メジャーに行ったら周りから方向性を指示されることとかもあると思うんですけど、
俺らの世代はもう音楽は自分でやりたいように作って、発信出来る。
自分自身の思いを曲にして、それで共感した人と繋がってネットワークが出来る。
そういう感じに自分は惹き付けられました。
 
 
─自分を発信して、それで繋がっていく人たちの音楽だと。
 そこからはどんな人を聴いていったんですか?
 
S-kainê:
それこそRAWAXXXさんがMOL53名義だったころの作品とか、仙人掌さんの作品とかを聴いてましたね。
やっぱりオニオンくんが軸になって聴き出したので、日本のBoom Bapを掘り出したって感じです。
 
最近はUSのHIPHOPも聴きますけどね。
90年代の物もですし、Lord Apexとか最近のBoom Bap寄りの作品も聴いて、ローファイ感とかを勉強してます。

 
─もう最初からBoom Bapを掘り出して、自分自身のスタイルとしても「Boom Bapでやってくんだ」って思いだったんですか?
 
S-kainê:
Boom Bapしかない、って感じでした。
自分の声が低いんで、これでTrapのノリで早くラップしても違うかなって…自分は早口でやりたくないんですよ、脳がパンクするんで。
内容を詰めるなら、自分の声の感じも合わせてBoom Bapのノリが良いな、と思ったんです。
 
だからBoom Bap自体ももちろん大好きだし、自分に合ったスタイルだと思って選んでますけど、聴く分にはTrapも大好きです。
特にJin Doggさんや和歌山のYoung zettonくんみたいな、トラップメタル寄りのが好きですね。
オートチューン掛けてボースティングする、みたいなスタイルよりは、自分の思いをシャウトする、みたいなところに惹かれます。
 
 
─幅広く聴かれる中で、影響を受けたアーティストっているんですか?
 
S-kainê:
ラップの面で言うならもちろんオニオンくん、そしてISSUGIさん。
ISSUGIさんは行動力が凄いなと思って見てて。
DJもするし、ビートも作るし、ラップも凄いし…なんでも出来るなと。
尊敬してるので、自分で初めて打ったイベントにもISSUGIさんは呼ばせて頂きました。
 
あと、そのときはBESさんも呼びましたね…やっぱりISSUGI & BESのタッグは作品として半端ないものをくれるので。
特にこないだ出た『Purple Ability』(2020年)は素晴らしかったっす、通しで聴いて、全部迫力デカいなと。
ISSUGI & BESの組み合わせは鉄板ですね。
 
ビートメイクで言うとBudamunkさんや…今は一緒に『DUST S PURPLE MUSK』(2020年)を出して動いてるOGRE WAVEくんに影響を受けてます。
Budamunkさんは最初ビートアルバムを聴いてて…そこから”Five Elements”とかも聴いてハマっていきました。
あの日本の「和」を活かしながら、あの濃厚な感触を出せるのは凄いですね。
 
 
あの人の感触で自分もビートを作ってみたいってなって、AKAI MPC1000でビート作ってたんですけど。
やっぱりBudamunkさんとは感性や触れる部分が全然違うな…ってのを痛感しました。
 
 
─MPC1000だと、S-kaineさんの年代からするとかなり古い機種ですね。どうしてその機種に辿り着いたんでしょう。
 
S-kainê:
自分の組んでるTag Forceってクルーがあるんですけど、そのメンバーのViteがたまたま持ってて、ある日「これあげるわ!」って言われて貰いました笑
 
 
その時からビートは作ってて、ただGaragebandとかだと物足りなく感じてた時に貰って。
でもやっぱりMPCを触ってみて…手の操作だと自分はタイミングとかが掴みづらくて結構苦戦したんですよ。
ただBack Down JunctionのレーベルメイトのBoRNくんに試しに渡してみたらちゃんと使いこなして…自分もそこから練習して出来るようになりました。
なのでレーベルの中に偶然ビートメイカーが2人出来ました笑
 
そこから今ではMIDIのキーボードも使って、レコードもサンプルして…みたいな形でビートを作ってます。
 
 
─ラップを自分でもやろう、となったのはSilent Killa Jointさんの”BlAqDeViL”を聴いてすぐですか?
 
S-kainê:
そうですね、オニオンくんのあの曲を聴いてすぐ始めました。
先に言った通り、元々サイファーとかはしてたんですけど、その時のラップは今の自分と180度違うノリだったんですよ。
もうお遊びで、ちゃらけるみたいな感じで。
そこから(“BlAqDeViL”を聴いて)覚悟を決めてやらなあかん、って思いました。
自分で頭からケツまで納得のいく作品を作るぞ、っていうマインドになった。
 
そこから曲を作り始めて…最初は繋がりもなかったのでライブも出来なかったんですけど、
TRIANGLEとかLong a longみたいな大阪の箱に通い出して、だんだんリンクが出来て、曲を作りだしてから1年後くらいに初ライブをしました。
初ライブはLong a longで、大阪で同世代の風立が彼の主宰してたイベントに呼んでくれました。
 
 
─初ライブと並行して作品も発表し始めたんですか?
 
S-kainê:
そうですね。
自分は一応『Dutch inc…』(2019年)を1stアルバムとしてるんですけど、その前にもストリートアルバムを5枚くらい出してて。
それこそ告知もなく現場で手売りする感じで、ライブを始めてすぐくらいには売り出してました。
最初の作品にも(のちにジョイントアルバムで共作する)呼煙魔さんビートの曲とかが入ってましたね。
ちゃんと作った2曲目がもう呼煙魔さんに頂いたビートでした。
 
 
─呼煙魔さんとはほぼ全作品で関わっている間柄ですが、ラップを始めたばかりの頃にどうやって繋がったんでしょう?
 
S-kainê:
TwitterのDMですね。
自分が呼煙魔さんをフォローしたとき、パって呼煙魔さんにフォローバックして貰ったんですよ。
で、「これはきっと間違えてフォローしてくれたやつや、絶対フォロー外される」って思って、外される前に速攻で「曲やらせて欲しいです」DMしてみたんです笑
そしたら「いいよ」って言って貰えて…そこからもう5, 6年とかの付き合いですね。
 
元々自分はMOL53さんの『ANTITHESIS』(2016年)に入ってる呼煙魔さん作のSkitをビートジャックしてたりするくらい好きだったんで、やれてありがたかったです。

 
─その後もストリートアルバムやSoundCloudで音源を重ねつつ、正式な1stアルバムと位置付ける『Dutch inc…』(2019年)に繋がる訳ですね。

 
S-kainê:
そうですね、当時はバイトもしてたんで、資金を貯めて「よっしゃ作るぞ」と。
このアルバムで今の自分を凝縮する思いでやったんですけど、そうなったときに誰とリンクしたいかってことで、
前からやらせて頂いてた呼煙魔さんはもちろん、(BACKROOMの)YOSHIMARLさんもイベントに通わせて貰ってリンクして、ビートを頂きました。
 
 
─『Ducth inc…』も以降のアルバムもですが、あくまで自分自身で繋がったビートメイカーから提供を受ける、というスタンスなんですね。
 
S-kainê:
そうですね、自分的にはタイプビートは選びたくないと思ってて。
自分としては、繋がった人たちと作品を出すことで生まれるものがHIPHOPなんじゃないかと思ってます。
他県に行ってその場所の人たちと一緒に曲やろう、ってなるところを大事にしたいなと。
ここがタイプビートとかだと純粋にビートの売買になるじゃないですか。
HIPHOPの良い所は出会った人たちと会話が弾んで、お互いにビートやラップがヤバいねとなって曲が作れるところ。
お互いに出会える環境が日本の中にある以上、そこで繋がれる人たちとやらないと、って思います。
それだとストックからビートを貰う場合でも、自分のスタイルを考えてくれた上でのビートが貰えますし。
 
 
─S-kainêさんの場合、トラックとラップは共に練り上げていくもの、という視点を大事にしてるんですね。
 
S-kainê:
そうですね、ビートメイカーと繋がる中で融合とか化学反応とかが生まれる部分を大事にしてます。
それこそ逆に俺に「挑戦して欲しい」ってあえてDrillのビートを投げてくれる人も出てきたりして笑、そういうのが良いですね。
 
 
─次に出た『Ka9421邪苦』『Ka9421邪苦 Another』(2020年)は、Boom BapのイメージをS-kainêさんに持っている人からすると実験的なビートも多い作品に仕上げていますね。

S-kainê:
そうですね。
このアルバムタイトルは漫画のBLEACHの摑趾追雀(かくしついじゃく)っていう技に由来してるんですけど、
その技が…ざっくり言うと世界と交信できる、携帯電話みたいな能力なんです。
この作品を通して他県の人たちとも繋がれたら、という思いを込めて付けました。
 
それもあって色んなビートメイカーの方から頂いて作ったんですけど…その、自分としてはリスナーに自分の形を固めさせたくないんですよね。
「S-kaineと言えばBoom Bapだ」と…言われたくない訳ではないんですけど、「S-kaineはBoom Bapだけなんだ」とは絶対に言わせない。
伝えたいことがあれば、俺はどんな音でも伝えれるぞ、っていうところを見せたくて色んな音を使ってます。
それこそクラシックなものもあればダブステップもあって、ゆるーい感じのもある。
色んな感情を見せれる作品になっていると思いますね。
 
 
─その意味では、S-kainêさんは「若手のBoom Bapの筆頭だ」みたいな期待を掛けられることも多いですが、自身ではそこにこだわりはない?
 
S-kainê:
そうですね。
自分の感情的なものを上手く見せる為にやってるんで、あくまでいちアーティストとして動くし、そう見て欲しい。
そこに何か「Boom Bapの星だ」とか「若手最強」だとか、肩書とかは一切いらないですね。
 
 
─じゃあ、極端な話トラップに乗ったりオートチューンを使ったアルバムを出す可能性だってあると。
 
S-kainê:
そうですね、あり得るっちゃあり得ます。
ただオートチューンは自分の中でタブーやと思ってるんで、そこはやらないですね。
自分の声を捨てることになる訳じゃないですか。
誰がやっても同じような感じの声に聴こえるのは一般人に戻るのと同じだと思ってます。
俺は自分の声で勝負する、そこを大事にしてます。
 
そして自分の声を最大限活かせると思うスタイルがBoom Bapやと思うのでこれでやってます。
ただ今後はチャレンジしたいジャンルもありますね。
それこそDrillとか…女性シンガーとコラボしてやるとかにも興味あります。
例えば大阪のTha JointzのJASSくんとやって、feat.にMediunnさんとか。
結構太いタイプの声の方なので、そういうシンガーの方にHOOKとか歌って貰って、自分はキレキレのラップで聴かせるみたいなのとか、やってみたいです。
それで例えばビートはMoney Jahさんで、レコードも出すとか…そういう渋いことが出来れば最高ですね。
 
 
 
 
─話をアルバムに戻すと、やはり『Ka9421邪苦』は実験的な作品だった訳ですね。その一歩踏み込んだことに対するリスナーからの反応はいかがでしたか?
 
S-kainê:
そうですね、アルバムテーマは『Dutch inc…』が(当時の自分の状況の)「凝縮」だったのに対して、このアルバムでは「変化」でした。
ただそれに対する反響って意味で言うと、これを出したときに新型コロナウイルスが出てきちゃったんで、あんまり物販とかで話を聞く、みたいなことが出来なかったんですよね…。
少なくとも関西の中で浸透してるとは聴いてるんですけど…良いとも悪いとも反応が貰えない時期になっちゃったっていうのはありますね。
 
 
─なるほど、そこは社会情勢とは言え辛い部分ですね…。
 ただ、その次に発表した『4hours SiX Back』(2020年)では呼煙魔さんとジョイントし、初めてビートメイカーを統一した作品となりました。
 超ストレートなBoom Bapに回帰した作品でもある訳ですが、この経緯など教えて貰えますか?

 
S-kainê:
このアルバムは偶然のノリで出来たんですよ。
俺が凱旋MC BATTLEかなんかで東京におったんですけど、前日に呼煙魔さんに連絡して、「イベント終わったら(呼煙魔さんのいる)茨城まで遊びに行って良いですか」って言ってたんです。
全然いいよって返事貰って行ったんですけど、着いたらそのまま呼煙魔さんのスタジオ行って、「じゃあやろうか」ってなって。
呼煙魔さんは最初普通に遊ぶだけだと思ってたかもなんですけど、自分がそのとき曲作りたいオーラがガンガン出てたんで、「このまま1作品作りましょう」って出合い頭に言って。
それで作り始めた感じです。
で、その時自分の送り迎えをしてくれたSHOTTAくんとALSEADくんとも話してたら結構仲良くなったんで、「俺の作品入って下さい」って頼んで入って貰ったりとか。
 
 
─じゃあ良い意味で、かなりその場のノリで仕上げた作品なんですね。
 
S-kainê:
そうですね、もうその場で全部リリックとかも書いて。
呼煙魔さんのところにいる4時間の間に全部リリック書いてレコーディングして…それで6曲完成させました。
だからアルバムの『4hours SiX Back』ってタイトルは、もう「4時間で6曲作って大阪帰った」っていう、そのまんまの意味です。
 
 
─凄いですね。この作品を含め、S-kainêさんは非常にハイペースに作品を作り続けています。その原動力は何なんでしょう。
 
S-kainê:
自分はビートにはひとつずつストーリーがあると思っていて。
そのビートを聴くと自分の中で降ってくるイメージがあるんで、そのイメージとビートのストーリーを融合させてバッと録ります。
ニート東京でも話した通り、基本はフリースタイルでバーッと全部出して、その中でイケてた歌詞やバチっと決まってた部分とかを繋ぎ合わせていく…パズル的な感じで作り上げてます。
自分は最初にHOOKのイメージが湧くことが多いんで、まずHOOKを作って、そこから歌い方のイメージを膨らませていく場合も多いですね。
 
 
─余談ですが、先日Oddy Lozyさんがツイートした中に9forさんのラップの作り方の解説がありましたね。
 9forさんの場合200ヴァース分くらいまず蹴って、そこからパズルすると。
 S-kainêさんもそれに近い作り方ということでしょうか。
 
S-kainê:
いや…自分はあそこまでは出来ないですね。
あくまでフリースタイルして、選んで、って感じなので、16小節蹴ったらそこから8小節分出来上がる、みたいな感じです。
 
 
─同じトラックメイカーとジョイントする中で見えてくるものってありましたか?
 
S-kainê:
あります。
直接ずっと会って一緒に作るって、自分の内面を見られるってことだと思います。
自分も相手の内面が見えてくる。
だからビートとかも互いのことを知った上で選曲してくれたり、このビートはこういうテーマでとか言ってくれますし、自分もやりたいことが言える。
それがセッションなんだと思いますし、そうした中で作り上げていくって言うのを大事にしてますね。
 
 
─なるほど。
 その意味では最新作『DUST S PURPLE MUSK』(2020年)もOGRE WAVEさんとのジョイントとなります。
 元々長い付き合いですが、制作のきっかけは?



S-kainê:
仰る通りOGRE WAVEくんとは元々2年前くらいから知り合いで、自分もずっとカッコ良いと思ってました。
それで「一緒に曲やろうよ」って言ってよくスタジオに遊びに行かせて貰ったりしてたんですけど。
その中で一緒にダラダラ過ごしたりしながら、ゲーム感覚で曲作りしてたんです。
良い意味で遊びのマインドでやってた。
そんな中で録り続けたやつが2年間で溜まってきたんで、その中から選んだ曲が今回のアルバムになった感じです。
だから他にも全然ストックはありますし、そういうのも配信したりしようかなとも考えてます。
その中にはRAWAXXXくんやBASEくんと乗った曲とかもありますし。
 
なので今回の『DUST S PURPLE MUSK』は第1弾って位置付けで、既に第2弾の制作も始まってて曲も出来てきてます。
その出来た曲をまずはMVとして上げて、そこから1年とか経ったのちにOGRE WAVEくんとのジョイント2発目をドロップしようかな、と考えてます。
 
 
─なるほど、楽しみな動きですね。
 そして『DUST S PURPLE MUSK』は2年間で録り溜めた曲を凝縮したものだと。
 曲によってテーマが異なったりするのには、そうした理由もあるんですね。
 
S-kainê:
そうですね、テーマもですし、2年前なのでラップ始めた頃の今とは全然違う声色の曲も入ってたりしますし。
逆に”2020″は今年始めだったり、”囁”とかは最近ですし…色々です。
ちなみに”3D Dogg”は1年前に、RAWAXXXくんと初めて一緒に録った曲ですね。
先に出た『Ka9421邪苦』に”Space to Basic”っていうRAWAXXXくん客演の曲があるんですけど、レコーディングしたのは”3D Dogg”が先です。
 
 
─『DUST S PURPLE MUSK』のS-kainêさんはボースティングしつつも、
 一方で生き方や自分の心に揺らいだり、迷ったりする様も同じ立ち振る舞い、同じテンションでスピットするのが印象的でした。
 例えば”囁”や”2020″など、ストロングなBoom Bapなんだけどリリックを聴くと結構悩み抜いている。
 でもラップとしては非常にハードで…この辺スタイルとして特徴的だなと思ったんですが、いかがですか?
 
S-kainê:
そこは結構OGRE WAVEくんに影響されたんですよ笑
なんか「俺は結構ネガティブやからさ」って言ってて…ビートに一個ずつテーマを設定してるらしいんですよ。
例えば「サラリーマンが会社を退職したときに流れているようなビート」とか、結構ネガティブなテーマが具体的に設定されてる笑
 
自分もそのテーマを基に…完全にそのテーマ通りに合わせて歌うことはないんですけど、ネガティブな方向性のリリックを自分のものとして書く、みたいにして作ってます。
まあ与えられたテーマがネガティブだからっていうのもありますけど、自分自身も外面は明るいんすけど内側はネガティブな人間やと思ってますし。
だから内面に持ってるネガティブな部分が曲に出て、でも自分のスタイルとしてはドープでいたいし…っていう葛藤が出てる感じです。
 
 
─その意味では、10月に出たシングル”bad berry”も、ダラダラする日のチルソングなのかと思いきや、それにしてはかなりダウナーな雰囲気が印象的な作品です。



S-kainê:
あの曲は『DUST S PURPLE MUSK』のリリパの翌日に、出し尽くして家でダラダラしながら作ったやつですね。
それを…MVの場所は友達の家なんですけど、その友達に速攻連絡してMV撮ったって感じです。
 
なのでリリパで出し切ったあとの…「なんかダリいな」っていう、日常の小さなネガティブを拾い集めた曲になってます。
 
 
─そこはやはり特徴的ですよね。MonjuやDLiP RECORDSにも通じるドープでいなたいラップだけど、リリックには結構迷いも見えるというか。
 
S-kainê:
別にスタンスとしてネガティブなラップをしようってことでは全然ないんですけど、
やっぱり自分の通ってきた道がそういうもので、それを出してるのでこういう形になりますね。
人生的には楽しい方なんですけどね笑
 
でもやっぱりマイナスな、心ない一言とかが結構刺さってしまうタイプなので。
それに対してムキになってリリックを書いてるときもありますね。
 
 
─そのマイナスな意見とは、主に高校生ラップ選手権に出たり、ハイスクールダンジョンに出たりする中で受けたものですか?
 
S-kainê:
そうですね、特に(第16回高校生ラップ選手権での)9forくんとの試合で勝った時には「誤審や」とかめっちゃ言われて。
 
(1回戦の百足との一戦より。引用元: https://kai-you.net/article/66262/images/7)

そういう意見とかちらほら見て…「いや、俺は俺の音楽をしただけやし、誤審とか関係ないわ、絶対音楽で見返したろ」って思ったし。
その思いを晴らすために曲を作りまくった時期もありました。
“Dutch inc…”とかはもう、そういう完全に気が立ってる時に書いた曲ですね。
リリックの中の「遊び気分で握っとんちゃうねん」のラインとかは、その辺を見据えて結構強気に書いた部分です。
 
でもバトルっていう観点で言うと、自分はそのバトルから自分の音源に引っ張ってくる力がまだ弱いと思いますね。
 
 
─と言うと?
 
S-kainê:
やっぱ”Onece Again”(『DUST S PURPLE MUSK』収録)のMVは高校生ラップ選手権の直後やったから結構伸びたんですけど。
 
 
それ以降のMVとかは中々伸びなかったりして、やっぱバトルに出ないと音源に引っ張ってこられへんのかな、みたいなのはありますね。
 
 
─響く人たちには確実に響いてますけどね。特に年上のリスナー層とかは”Heavy Way Dirty”(『4hours SiX Back』収録)の煙たさに沸いてましたし。バトル関係なく。
 
S-kainê:
やっぱ年上の層が沸くものと同世代の大多数が沸くものが違うからっていうのはあるんですよね。
もちろん自分の世代にもBoom Bap大好きな層はいるんですけど、トラップとかに比べると少人数なので。
 
自分も、オニオンくんみたいに誰かが音楽を始めるきっかけになるような、影響を与えるような音楽を作りたいんです。
それが自分の知らないところで起きていても良い。
その為にも、自分の音源をきちんと届ける、っていうのは大事にしていきたいです。
 
 
─その為に今後も動き続けると。
 今年も活動は活発でしたが、これからの動きについて教えて下さい。
 
S-kainê:
まずは『DUST S PURPLE MUSK』のCD盤が10/22に出ます。
 
 (以下リンクから購入可能。盤限定曲あり)
 
そしてそれ以降、このアルバムの全国ツアーを始めます。
特に12月には神奈川で大がかりにライブをやる予定なんで来て下さい。
DUSTY-HUSKYさんやDIRTY JOINTさんも呼んで、DJでRHYMEBOYAさんもいて…その上で自分も関西の仲間を大勢連れてきてリリースライブをやるので。
 
 
─それは熱いですね。その他の作品についてはいかがですか?
 
S-kainê:
それから11月末に自分がDrillに挑戦した曲が、Fuma no KTRくん客演で出ます。
 
加えて12月に1st『Dutch inc…』を20曲くらいに拡大したデラックス版みたいなのが出ます。
それは結構地方で出会ったビートメイカーとかとリンクして作ったやつで。
DJ SCRATCH NICEさんやGRADIS NICEさん、DJ GQさん、ENDRUNさん…そしてISSUGIさんにもビートを頂いてます。
 
 
─それは豪華ですね…日本のBoom Bapの最強布陣じゃないですか。
 お金払えば取りあえずやってくれる、みたいなメンツじゃないですもんね。
 
S-kainê:
そうですね、それをこの年代で出すって、まだ未踏の領域やと思うんで、俺がやったろうと。
それぞれの方とリンクしてやりました。
ENDRUNさんも僕の家に遊びに来て色々アドバイスしてくれたりとか。
DJ SCRATCH NICEさんとかはいまUSなんでメールとかで連絡して、MV見て貰った上で「カッコ良いね」と言って貰えて繋がって、みたいな。
 
このアルバムのリリース後には、また全国ツアーして、そのあと2LPでも出したいなと思ってます。
そんな動きを20歳までにやり切るってひとつの目標なんで、やります。

あと…99曲入りのアルバムも年明けに出す予定です。
1ヴァース・1HOOKで、全部自分のビートです。
この動きは世界的に拡大させていきたいですね。
そんな訳で、これからも動き続けます。

 
─最後のはまた大ニュースですね笑 楽しみにしています、ありがとうございました。

以上 (2020/10/16)
───

OGRE WAVE & S-kaine 『DUST S PURPLE MUSK』

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