Column/Interview

I-DeAの『self expression』(2004年)への参加で一気にシーンの注目を集めて以降、15年以上経った今もSEEDAはフレッシュだ。若手との共演、いち早くUK Drillを持ち込む先見性、ニートtokyoのブランド確立…。常に我々の耳目を集める、その動きに裏打ちされた考えはどのようなものなのか。そして2021年1月に逝去したSCARSのメンバー・STICKYへの想いとは。

これはインタビューで得た膨大な言葉の中からSEEDAと共にエッセンスを厳選して抽出した、濃厚なショートインタビューだ。

─最近特に「SEEDAは若手もくまなくチェックしてる」みたいな評判が方々から聞こえてきます。自身の中で、意識して若手の掘り起こしを行うようになった意識はありますか?

SEEDA:
そうですね、ニートtokyoを始めてからは意識しています。特に…以前ニートtokyoに出演してくれた018くんの「日本でHIPHOPをやってる人たちはそれだけで全員リスペクトしてます」ってあの言葉に心を打たれました。以前はやっぱり、どうしても「ここからここまではカッコ良い、あっち側はダサい」とか線引きしていました。

今はまず聴いてみて、今の自分に分からないものだったとしても否定から入らないってのは大事にしてます。自分に分からなくても(再生回数などの)数字が出てる曲であれば、みんながなんでこれを面白いと思って、自分は何が受け入れられてないのか、くらいは分かるまで聴き込みます。これを毎日繰り返して…って感じです。

以前GUCCI MANEのインタビューを見たんですけど、「なんでそんなに若い世代と曲をつくれるの?」みたいなことを聞かれたとき、「理解出来ない曲や たとえ嫌いな曲であったとしても否定から入らない。まずは理解しようとする」みたいなことを言ってたんです。それは自分としても持っている意識で…例えば、TYOSiNがKamiyada達を自身のパーティーに呼んだんときがあって、自分も行ったんですよ。そのときに「モッシュピットやっちゃいましょうよ」って誘ってくれて。それでモッシュピットに入ってみて…そしたらトラップメタルが好きになったんです。そんな感じであの時くれたきっかけや色んな事が、今の自分に大きく繋がっています。

─”BUSSIN'”(2015年)あたりから自身が客演参加する形で新たなアーティストとの繋がりをリスナーに見せてくれることが増えた気がします。

SEEDA:
“BUSSIN'”はChakiさんやJNKMN、kZmと一緒に作れて最高だったけど…当時は歌詞が全然書けなかったから大変でした。Chakiさんがミックスを含めて聴けるレベルまでサポートしてくれましたね。

─余談ですが、先日JNKMNさんのインタビューでこの曲について聞いたときは、「SEEDAさんは単語がふたつくらい書いた紙だけブースに持ってきてフリースタイルで録ってた」と話してました。

SEEDA:
俺を立ててくれてるんだと思いますよ(笑) 実際JNKMNからも歌詞をもらったりしたし、ほとんどフリースタイルだけど、みんなで作りました。

─こうした活動を続ける中で、日本のHIPHOPシーンにおいてフックアップ文化が足りないという意識がある?

SEEDA:
いや、別に俺としては思ってないです。というか、自分の動きをフックアップとは思っていなくて。僕が声を掛けたとしてもお互いにとってWin-Winになるべきものだと思って動いているので、フックアップと言うより対等な関係でやってる感じだと思ってます。相手から貰うものもたくさんあります。

─最近の若手で気になる人たちは誰なんですか?

SEEDA:
思い付くまま言えばいっぱいいますよ。でもまあ若手という見方はしていないのですが、LEXとTOKYOTRILLが音楽的にぶちかましていて凄いです。

─2021年1月にSCARSのSTICKYさんが逝去されました。今回STICKYさんへの手向けとなる新曲”KAWASAKI BLUE”をリリースされましたが、この場でリスナーに伝えておきたいことがあれば教えて下さい。 

SEEDA:
伝えたいこと自体は、今回リリースした”KAWASAKI BLUE”に全部詰め込んでます。

あえてこの曲に書いてないことで言うと…あいつは仲間の中でも巻くのが一番上手かった。いつも完璧だった、パーフェクトロール。STICKYの巻いたブランツが吸えない。それが一番寂しいですね。

───
2021/11/30
PRKS9へのインタビュー・コラム執筆依頼・寄稿などについてはHP問い合わせ欄、あるいは info@prks9.com からお申し込み下さい。

作品情報:

Artist: SEEDA
Title: KAWASAKI BLUE
2021年11月30日リリース
Stream: https://linkco.re/3AGcTDqV 


アーティスト情報:
SEEDA

東京都出身。幼少期をロンドンで過ごす。バイリンガルスタイルのキレのあるラップでストリートの詩情を切り取り、早逝した姉への思いを歌ったアルバムのタイトル曲などを収録した記念碑的作品『花と雨』(2006)をはじめとして、これまで数多くのクラシックを生み出した。

2009年12月にリリースしたシングル「WISDOM」はオリコンデイリーチャートにて最高5位を記録、ウィークリーチャートでも8位と初のオリコン一桁台のランクイン。2010年8月アルバム『BREATHE』をリリース。i-Tunes総合チャート最高2位、オリコンインディーズチャート2位を記録した。

SEEDAが生み出したフローとリリックは、それまでの日本のラップゲームを一変するものだといわれる。他に日本のヒップホップのイノベーターとして、主に時の若手の楽曲を集めたMIX CD『CONCRETE GREEN』シリーズ(2006~)をDJ ISSOと制作、また現在では毎日更新のYouTube番組ニートtokyo(2017~)を主宰するなど、楽曲以外のクリエイションの評価も高い。

Twitter: https://twitter.com/neetseeda?s=20 
Instagram: https://www.instagram.com/neetseeda/ 

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。