全曲本人解説:Madaler Kid『ILL VI』
鹿児島出身、現在は横浜を拠点に活動する若手・Madaler Kidの1st EP。2021年3月20日各種配信ストアでリリース。
Madaler Kidというアーティスト
鹿児島出身のMadaler Kidが放った本作に通底するのは「叩き上げ意識」だろう。
その意味に迫る為に、まずは彼のキャリアをごく簡単に振り返りたい。
Madaler Kidは現在19歳。
2019年より地元鹿児島で活動を始めると共にSoundCloud上で楽曲を発表、CuffboiやLo-keyBoiら、今作にも参加したメンバーと輪を広げた。
その後2020年4月に公開した”BLACK MAMBA”のMVがコア層に届いたことを確認すると、5月には横浜に移り住みアーティスト活動を本格化させ、今作に至る。
驚かされるのは、移住を含め、キャリアの開始から1年ほどの間にこれだけの実績を積み上げるスピード感・即断力だ。
代表曲である”1ndependent”で「speedy I’ma 圧倒的」と繰り返されることを鑑みるに、この点はかなり自覚的なポイントだろう。
このスピード感と決断力。
そこにアーティストとして生きていくことに対する信念が見え隠れすると同時に、Madaler Kidの貪欲に輪を広げ、音を吸収する姿勢を裏付けている。
(ストリートの同業者から確かな支持を受けているのも、そうした姿勢に対する正当な評価だろう)
そうした「貪欲に輪を広げ、音を吸収する」姿勢をそのままコンパイルしたのが今回の『ILL VI』だ。
本作にはSoundCloudで繋がった仲間、横浜に来てから出会った仲間を総動員し、各曲が移り変わるごとにジャンルもMadaler Kidのアプローチもガラリと変わる。
そのため本作は、圧倒的なスピードで地金を叩き上げてきた、Madaler Kidの現時点での全てを出し切った作品と言える。
音楽性の希求、鹿児島の片隅・坂元町の団地で共に育った仲間への愛…。
本人の解説を通じ、本作への想いを感じ取って頂ければ幸いだ。
加えてMadaler Kidは本作のあとも隠し玉を仕込んでいるとのことで、これからの動きにも注目したい。
(2021/03/22 by 遼 the CP)
EP解説 by Madaler Kid
1曲目ではグランジに挑戦しました。
shivaくんはニートTokyoにも出演していますが、まだまだ過小評価だと思いますし、もっと売れると思います。
shivaくんの特徴はリリックが素直なところだと思っているので、それに合わせて、自分も何も考えずに降ってきたリリックをHOOKに使いました。
とりあえず敵も悪環境も、得体の知れない何かを叩き潰したいってfeelしたままに作った1曲です。
$ATSUK1 boiくん、元(AK1RA)くんと作った曲です…彼はTok10くんともMVを出していてかなり知名度もありますね。
元々1人のファンとしてAK1RAくんを聴いてて、こういうTrapなら彼と1番相性が良いだろうと思って、SNSでフォローもフォロバもされてないときにDMと自分の曲を送りました。
そしたら客演に入って頂くことになって…まず1曲作った時に「あと2曲ぐらい作ろう」と言われたのが嬉しくて記憶に残ってます。
この曲のときはなんかむしゃくしゃしてて、自分の邪魔なのものとか、気持ち悪いしがらみみたいなのを全部ぶっ飛ばしたいって感じで。
ビートはNascar aloneのType Beatなんですけど、俺もAK1RAくんにも暴れてもらいました。
特に自信のある1曲です。
この曲から、少しテイストを変えています。
最近US作品のディグを増やしてるんですが…そんな中で、日本語にアクセントをつけることでgrooveを作り出せないか、って思いがあって。
客演のQONNくんは横浜のクルー・BSBのメンバーで、初めてライブが被った時にQONNくんから「かっけーから曲やろうよ」って声かけて頂きました。
そのときに作ったのがこの曲で、僕のEPに入れることになりました。
彼はクラブでも人気があって、本当に面白くて気さくな方です。
HOOKでは彼の武器である音域の広さからなるメロディーを、ヴァースでは僕の新しく身につけたgrooveを用いて完成させています。
お気に入りの1曲ですね。
これは去年MVを出した曲です。
上京して1年が経つんですけど、余所者ながら横浜の精鋭揃いのステージの上でかませたなと。
今の自分を作り上げてくれた曲なのでEPに収録しました。
「Madaler Kid」というアーティストの認知度を最も高めてくれた曲だと思います。
Lo-keyくんとは何度か曲を作っていて、彼が今ほど売れてない時から知り合いです。
その時から異才を放っていて、自分がEPを作るときは必ず呼ぶと心に決めていました。
この曲のテーマはわかりやすく言うと「叩き上げ」です。
個人的にLo-keyくんは持ち味の声とメロディアスなフロー、Mixやマスタリング技術もあって、プレイヤーとリスナー、双方からの期待値が高いアーティストだなと。
それに比べると、自分はプレイヤーやオーガナイザーなどからの期待値はがなり得られているのに対し、リスナーが思った数字ほどついていないことに気がついて。
自分は勝手にLo-keyくんは天才だと思ってるんですが笑、それなら天才(Lo-keyBoi)と秀才(Madaler Kid)でわからせてやろうと言う気持ちで作りました。
最近のシーンでもかなり上位を行くようなテイストじゃないかなと思っています。
この曲は急遽EPに入れることになった作品です。
客演してもらったMELLMWOR1Dは、横浜に来て活動を共にすることになった仲間です。
元々この曲はソロの予定だったんですが、たまたま彼が家に来たときに「みんなで跳ねられるDJタイムでも流れておかしくない曲を作ろう!」とLil uzi vert のType Beatでノリで作って。
完成してみたら「これはヤバい」って感じて、急遽収録することになりました。
MELLMはまだ活動始めてからのキャリアが浅く、正直それまでは、まだサブスク配信には早いかなと思ってて。
しかしこの曲を通じて期待を超えてきたなと思って、彼を信用してEPに採用しました。
今後の彼にも期待したいです。
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2021/03/22
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