インタビュー: Zean & Radiax for Gully Riddim – The Tao of Bass, 中国の求道者たち by @PAKINorSMA
約2500年前に生きたある中国の哲学者は、国を去る直前、その後数千年に渡り東アジアに影響を及ぼす書物を書き残し、一説によれば西洋の大国・ローマへ向けて旅立ったという。それから2000年あまりが経過した現代。ニューヨークはブロンクスで生まれたある音楽は、海を越え大陸を超え、容易に東洋まで届いた。そして今また、東洋から西洋へ、新たな球が投げ返されようとしている。
アジア圏でのラップミュージック熱の高まりが定着して久しい。その震源地のひとつとして、中国の名をあげることに異論はないだろう。Higher Brothersといったトップアーティストだけでなく、ショーン・ミヤシロ、馬正遠(Jaeson Ma)によって作られたレーベル・88 risingの存在(「欧米へアジアのヤバいHIPHOPを紹介し、成功させた」という功績は、2010年代HIPHOPシーンに於ける最大のブレイクスルーの一つだと思う)、そし現地中国で大ヒットしたラップバトル番組・中国有嘻哈 (The Rap of China)の勃興(そして、それに対する当局の締め付け)など、話題には事欠かない。
一方、西洋からやってきたのはHIPHOPだけではない。様々なダンスミュージックとそれを支えるカルチャー群もまたしかりだ。訳者本人が上海に訪問した際には、若者の服装が非常に洗練されており、(表参道のクラブ・Ventや、渋谷・VISIONにいそうな…というと伝わるだろうか?)現地のクラブではハウス、テクノといった様々なジャンルのイベントが開催されていたこと、多くの若者が参加し、夜を通して大盛り上がりであったことが印象に残っている。そしてその夜の隙間に、ベースミュージック、そしてグライムが席を占めているというわけである。
訪問から数年経った今、その縁が繋がり、中国は上海の新興ベースミュージック/グライムのレーベル・Gully RiddimのレーベルコンピレーションEP『Gully Compilation 001』にて、筆者は中国のベースミュージックアーティスト・Radiax提供のビートの上でスピットした1曲を提供させて頂いた。
折角の機会、彼らのことをより日本の感度が高いリスナーに知ってもらいたいと思い、レーベルオーナーであるZeanと、Radiax本人にメールでインタビューを行った。Zeanは上海、Radiaxは北京在住である。日本にはまだまだ伝わってこないご当地のHIPHOP/ラップアーティストや、現地ベニュー情報と合わせてご笑覧頂ければ幸いである。
by PAKIN
1. Gully Riddimオーナー・Zean
PAKIN: まず、あなたのバイオグラフィーを教えてください。
Zean:
やあ、Zeanだ。今は上海を拠点に活動しているエレクトロミュージックのプロデューサーだよ。
PAKIN: 前々から自分のイベントを主催されてましたね。なぜレーベルを立ち上げたのですか?また、あなたの目標は何ですか?
Zean:
最初からレーベルを設立することを計画していたわけじゃなかった。僕は「Missing Riddim」というイベントを毎月開催していて、同じ時期にパートナーのALKが「Gully なんとか」って自分のパーティーを開催していた(全部のタイトルは覚えてないな)。だから、2017年から一緒に「Gully Riddim」としてイベントをやるようになったんだ。2019年に最初のMCであるG94が見つかったので、レーベルとして作ることにした。主な目標は、アンダーグラウンド・ベース・ミュージック・シーンをゆっくりと作り上げていくことだと思う。
▶G94についてはAVYSS Magazineの記事に詳細有
PAKIN: 上海のクラブ/ラップミュージックシーンについてお聞きしたいのですが、今は上海はどのような状況でしょうか?また、上海のラッパーで注目している人はいますか?
Zean:
上海の音楽シーンはとても良いと思うよ!新型コロナウイルスの影響で海外のアーティストは来れないけれど、地元のアーティストの良いパフォーマンスはたくさん見られるね。新しいクラブやアーティストもたくさん登場してる。新しいラッパーはあまりいないけど、新しいプロデューサーは何人か見つけたんだよね……!
PAKIN: あなたの好きなベースミュージックやラップミュージックのアーティストは誰ですか?中国人だけでなく、外国人も大歓迎です。
Zean:
一人だけを挙げることはできないかな。良いラッパーやシンガーがたくさんいるね。僕はEcho Buzz, Novelist, 13 Block, Lil Asaf, Death GripsのMc Ride, Injury Reserveなどが好きです。ほとんどの人が普通のHIPHOPやグライム/ドリルラッパーとは異なると思うよ。
Mumdance “Take Time feat. Novelist”
13 Block “Vide”
Lil Asaf “3EED”
Death Grips “Takyon (Death Yon)”
INJURY RESERVE “Oh Shit!!!”
PAKIN: 最後に、日本のリスナーに向けてメッセージをお願いします。また、日本のアーティストがあなたのレーベルに楽曲を送りたい場合、どうすればいいでしょうか?
Zean:
改めて、皆さん、こんにちは!僕たちの音楽を皆さんと共有できることをとても嬉しく思います。皆さんのご意見、ご感想をお聞かせください!どんなことでも結構です。もし僕たちのレーベルから音楽をリリースすることに興味があれば、あなたのビート/曲/アイデア/その他すべてを gullyriddimsh@gmail.com まで送ってください。よろしくお願いします。
2. 北京在住のプロデューサー・Radiax
PAKIN: まず、あなたのバイオグラフィーを教えてください。
Radiax:
こんにちは、BowenことRadiaxです。ベースミュージックのプロデューサー/DJで、Unchianed.Asia, Hospital Records, SkankandBass records, Gully Riddimなどに楽曲を提供しています。
(訳者注:Hospital Recordsは1996年南ロンドンで設立された世界的に権威のある老舗ドラムンベースレーベル。主催者のトニー・コールマンのソロプロジェクト・London Elektricityは、日本を含めた各国のフェス、レイヴの常連。日本だとDnBプロデューサー・Makotoが本レーベルに参加している)
PAKIN: いつからドラムンベースやダブステップの制作を始めましたか?また、あなたにとっての目標はありますか?
Radiax:
17歳で音楽を始めて、もう8年が経ちました。もし目標があるとすれば、自分の音楽を世界中に広めることですね。
PAKIN: 北京にお住まいだと伺いました。あなたおすすめのラップミュージックやベースミュージックを聞けるクラブはありますか?
Radiax:
そうですね、北京にはアンダーグラウンド・ミュージックのレジェンド・クラブであるDada Barをはじめ、Zhaodai, Clashなど4-5のクラブがあります。ラップの場合は、PlayHouseやOne Thirdなどの商業的なHIPHOPクラブやMao Liveなどのライブハウスがあります。
PAKIN: あなたの好きなベースミュージックやラップミュージックのプロデューサーは誰ですか?
Radiax:
Howie Leeはとてもお勧めです!彼は伝説のミュージシャンで、香港出身で今はロンドンに住んでいます。
Bohan Phoenix “FOREIGN (Prod. Howie Lee)”
Howie Lee “Borderless Shadows [ LIVE ]”
Howie Lee explores cutting-edge sound design
PAKIN: 最後に、日本のリスナーに向けてメッセージをお願いします。また、日本のアーティストがあなたのレーベルに楽曲を送りたい場合、どうすればいいでしょうか?
Radiax:
日本のリスナーとコンタクトを取ることができて、とても光栄です。早くウィルスが治って、日本でDJができるようになるといいですね。コンタクト先については…… そうですね、Facebookはあまり使わないので、Instagramに連絡してください ;D
Jar bless! Big Love!
PAKIN: Thank you Zean & Radiax! また、彼らの音楽に少しでも興味を持ったら是非下記サイトもチェックして欲しい。
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2021/09/07
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▶Radiax: SoundCloud / Instagram / Facebook
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