尖った若手の震源地・Sound Cloudでいま何が起きているのか - BENXNI (STARKIDS)インタビュー





Sound Cloudが最先端の音楽の震源地になって数年が経つ。
元々2008年にサービスを開始したSound Cloudだが、2010年頃に当時隆盛を極めたフリーミクステトレンドとシンクロして盛り上がって以降は、そのトレンドの収まりと共にやや鳴りを潜めていた期間が続いたように思う。

それが楽曲制作の敷居が下がったこと、それに伴う人口増加により、特に若年層の流入が世界的な傾向として続き、ここ数年は最も若く尖った音楽の集合地となっている。
配信ストアのように音源審査や(登録代行サイトを利用することによる)管理料といった手間・コストが掛からない点は、まだ若いアーティスト達にとって大きな魅力だ。

この場でいま、日本でどのようなうねりが起きつつあるのか。
今回PRKS9では、ハイパーポップのクルーとして急速に注目を集めるSTARKIDSのメンバーで、自身もSound Cloudから成りあがってきたBENXNIにインタビューした。

彼のバックグラウンドやSTARKIDSの最新作についての話を交えつつ、「なぜいま再びSound Cloudなのか」、プレイヤー側からその理由の一端が窺える内容となっている。




登場する主なアーティスト(順不同):
BAD HOP, Drain Gang, Spider Gang, hirihiri, KuttaraNeru, EDWARD(我), Yokai Jaki, glaive, osquinn



「僕らは最近までハイパーポップって言葉を知らなかった」


─本日は注目を浴びる若手クルー・STARKIDSからBENXNIさんに来て頂きました。

BENXNI:
どうもBENXNIです、出身は千葉で、最近東京に出てきて活動しています。
STARKIDSのメンバーに出会って、結成してから東京に来た感じですね。



─ありがとうございます、STARKIDSについてはのちほど詳しく聞かせて頂きます。
 まずはBENXNIさんのバックグラウンドとして、HIPHOPに出会うまではどのような音楽を聴いていたんでしょう?

BENXNI:
元々色んな音楽を聴いていて…デビッドボウイや平沢進みたいな。
あとはUSのHIPHOPも聴いてたんですけど、日本のHIPHOPに出会ったのはBAD HOPでしたね。
特に(Tiji Jojoソロの) "White T-Shirt"とかは最高だなって思って。
「あ、日本語でも出来るんだ」と思って…元々DTMはやっていて普通の歌は作ってたので、じゃあ自分でHIPHOPも作ってみようかって思うようになりました。





─色んな音楽も通ってきた中で、HIPHOPのどういった部分に共感したのでしょう。

BENXNI:
HIPHOPって他と違って歌詞が一人称、自己紹介で、自分の思ったことを言う音楽じゃないですか。
ふわふわした歌詞じゃない、そこが良いなと思いました。



─特に影響を受けたアーティストなどはいますか?

Drain GangとSpider Gangですね。
サンクラメインで活動して、仲間たちと好きなことやって上がっていった感じがあるので、あれを目指したいですね。





─配信デビューシングル"Demon Girl"で話題を呼びつつ、goonyearsさんとの『sleepwalking』, STARKIDS色が全面に出た"TENGOKU feat.Tahiti, EDWARD & buzzd"ときましたが、ここまでのソロ活動の流れや各作品への思い入れなど教えて下さい。

BENXNI:
"Demon Girl"は元々サンクラに上げてた曲ですけど、評判が良いのでMixし直して配信しました。

気に入っているのは『sleepwalking』ですね。
ビートを自分で手掛けたのと、歌詞も実際の思い入れが詰まってるので。
当時の勢いある感じを詰め込んで、かなり短い期間で制作した作品でした。

"TENGOKU"は…正直ここまでみんな好きになってくれるとは思ってなかったです。
かなり勢いで作った曲なんですよ。
真夜中にリモートでTahitiと曲作って「これ良いじゃん」って言ってたのをEDWARDさんに送ったら、朝になったらVerseが届いてて笑
それで完成して出したらヒットしちゃったんで、ビックリですね笑





─ではここからSTARKIDSについて教えて下さい。
 まずはメンバー構成や結成経緯などを聞かせて貰えればと。

BENXNI:
メンバーはLil Roar, BENXNI, Espeon, Space Boy, Tahiti, Leviの6人です。
みんなで結成した訳じゃなくて、僕が入ったのは最後から2番目くらいですね。
まずSpace BoyとTahitiが互いに日本にいることが分かって、会ってみたら意気投合して曲作ることになって…それでSTARKIDSが出来ました。
それからSpace Boyと幼馴染のEspeon, Tahitiと仲が良かったleviが自然と加入して。

僕はSpace BoyがJolno Keiさんとかとやってた曲を聴いて「めっちゃ良いじゃん」みたいにDMしたら「じゃあSTARKIDS入る?」みたいな軽い返信が来て笑

Space Boy · Fuck Me Up Ft. Jolno Kei, espeon, nate [Prod. Northeast Lights + odece]


それで会ってみたら面白い奴だったんで、一緒にやることになりました…それが2019年くらいですかね。
そのあとライブを重ねていくうちに、共演したりしていたLil Roarも2020年頃に入った感じです。

最初はただ仲良く遊んでたんで、こんなにガッツリ活動するとは思わなかったですね。



─良い意味でガツガツせず気楽なクルーと言う感じ?

BENXNI:
そうですね、元々みんな自分で曲を作る人間で楽曲制作が生活の一部なので。
いつも通り作る中で、仲間がいる、という感じです。
ただ最近になって、「狙ってヤバいのを作ろう」みたいな意識は出てきました。



─BENXNIさんやSTARKIDSは現在日本のハイパーポップ×HIPHOPの旗手的に注目を浴びている訳ですが、ご自身の中でハイパーポップへの想いってどんなものなんでしょう?

BENXNI:
まず、僕らは最近までハイパーポップって言葉を知らなかったんですよ。
周りにそう言われるから「ああこれがそうなんだ」みたいな。
元々Sound Cloudにあるアメリカの若いアーティストの曲とかをいつも聴いていて、その中で面白いと思った音が血肉になってるって感じですね。



プレイヤーにとってのSound Cloudとは


─STARKIDSにとってSound Cloudの存在は大きい?

BENXNI:
めちゃくちゃ大きいですね、ほとんどサンクラから始まってますし、そこから吸収してます。
自分が最初にアーティストと繋がったのもサンクラで出会った外国の人でしたし、プレイヤーにとってはもうサンクラが繋がる場になってる気がします。



─じゃあ、STARKIDSとしては「ハイパーポップをやるクルーだ」という意識は別にないと。

BENXNI:
そうですね、最近そう言われてるから「もっとやろうぜ」みたいなノリになってますけど笑、知らなければ全然こだわらずにやってたと思います。



─BENXNIさんがYokai Jakiさんと出した"KOGEKI!"なんて曲もありますが、この意外な組み合わせもきっとサンクラ経由ですよね?

BENXNI:
そうです。
Yokai Jakiくんは有名になるずっと前…まだフォロワーが800人いないくらいのときからサンクラで繋がっていて。

STARKIDSはみんな外国人なので、日本の人たちっていうよりは、離れた国の音楽をサンクラで聴いて「これに勝たなきゃ」みたいな感じで聴いてますね、戦いの場です。





─そこからハイパーポップ的な要素をSTARKIDSに持ち込んだのはBENXNIさん?

BENXNI:
いや、あくまでみんなが聴いてたものがそっちにシフトしていった中で自然に…って感じです。
メンバーもHyper PopやGlitchcoreを聴くようになっていって、その影響が表れるというか。
(STARKIDSとしての初EPである)『Our Universe』(2019年, 現在非公開)とかの頃はLil Moseyとかを聴いていてそういうTrapになったりとか…お互いに影響し合ってるので、みんな段々共通した音楽を聴くようになってます。

僕らはそんな器用じゃないんで、作ろうとして狙って「こういう音楽性のアルバム作ろう」とか出来ないんです、なんとなくでいつもやってるんで笑
その時々で面白いと思ったもののうち血肉になったものが自然に出てくる、そんな感じですね。
今もサンクラをメインに色々聴いて吸収してます。



─『Our Universe』について言えば、あのEPは全編英語ですよね。
 そこもシンプルながら今のスタンスとは違うところで。

BENXNI:
あのEPのときはまだ僕もいなかったんですけど、単純に当時のメンバーが全員外国人だからそうなったってことかなと。
今は日本語の歌詞も増えてますけど、それは単純にメンバーの日本語が上手くなってきたからって言うのもあって。
その背景には、明確に日本のシーンを見るようになったからっていうのがあります。
そこを見据えてるから、Space Boyとかはいつも「もっと日本語頑張んなきゃ」って言って勉強してます。



─ハイパーポップを取り入れるアーティストは日本でも急速に増えていますが、STARKIDSから見て、日本の今のハイパーポップシーン的なものはどう見えてますか?

BENXNI:
クルーで似たようなことやってるアーティストは知らないんですけど、個人で面白いなと思う人はちょいちょいいますね。
例えばJohn Doeくんとかokudakunとか。
okudakunなんてまだ17歳くらいだと思うんですけど、その他にも同年代くらいで面白い子たちが出てきてる感じで。
自分よりひとつ下くらいの世代で盛り上がってきてる感じはします。

JohnDOE · 3!FREEZE feat levi(Prod. @dopelordmike)

okuda kun · neveren feat.minty(prod.okudakun)


アメリカでも最先端の音楽は18歳以下から出る、みたいなのが主流になりつつありますし、そのトレンドが日本にも来てるのかなと。
これからどう盛り上がるのかワクワクしますね。



─glaiveやosquinnも15歳くらいで時代の寵児になりましたからね。
 プレイヤー側から見るとサンクラの持つ磁場的な魅力って何なんでしょう。

BENXNI:
まずは無料で使えるっていうこと。
それから…日本はサンクラが本格的に活用され出したのが結構遅かったと思うんですけど、その前は技術ある人ってニコニコ動画とかだったと思うんです。
それがサンクラなら動画化しなくて音源だけで良いっていうので流入してきたかなと…もちろん両者だと色も違うんですけど。

サンクラは音源を上げたり修正したりみたいなユーザビリティも良いので、自然な流れだと思います。
アーティスト同士でDMを気軽に送って繋がるみたいな場としても強いですし。
でも今サンクラが盛り上がってるというよりは、これからいよいよ来るって感じだと思います。



─15-16歳のアーティスト達の中でサンクラがこれから爆発的に盛り上がると。
 なぜそう思われるんでしょう?

BENXNI:
たぶん、みんな他にいくとこがないんですよ。
みんなまだ金なくて、どこで自分の音源を上げれるかっていうとYoutubeかサンクラくらいしかない。
毎度動画化するのも大変なんで、みんなこっちに流れてくると。

曲を上げて、同年代の面白いアーティストと繋がっていくと一緒に曲やったりして上がっていく、みたいな感じです、自分もそうでした。
むしろ、いま尖った音楽やってる人でサンクラにいない人はいないんじゃないかな。
そういう最先端な音楽が知りたければ、STARKIDSメンバーのアカウントがLikeしてる曲とかを辿っていけば、色々面白いものが見つかると思います。



─感度の高いアーティスト達にとって「曲のSNS」みたいな機能を果たしてる感じですね。
 日本のサンクラ、ひいてはHIPHOPシーンが盛り上がっていくための課題みたいなものはありますか?

BENXNI:
日本はビートメイカーの数が足りないです。
日本のスタイルが遅れてると言われたりするのって、ビートの母数が足りないからじゃないかってずっと思ってます。
海外のビートメイカーにリーチ出来れば良いんですけど、みんなが英語出来る訳じゃないので。

その点STARKIDSは(英語が出来るので)Youtubeをメインに色んな無名だけど尖ってるプロデューサーをDigりまくってます。
Youtubeで500再生いかないような、でも良い音のプロデューサーをSTARKIDSはたくさん知ってるので。
それで海外の色んなプロデューサーと繋がって助けて貰える関係を築いているので、そこは強みですね。

そんなビートメイカーが日本にももっと増えると嬉しいのに…って思っています。
もちろん日本でもKuttaraNeruさんとかhirihiriさんとか尖った人はいるので、STARKIDSとして使わせてもらったりしてます。
 


『R-RATED』のリリース後は色んなところから「話を聞かせてくれ」って引き合いが来てる


─ではここから、そんな強みを発揮して作られたSTARKIDSのアルバム『R-RATED』について教えて下さい。
 まずこのタイミングで出すことになった背景は?



BENXNI:
まず、この作品は制作に一番時間が掛かりました。
それは「ヤバい曲しか世に出しちゃいけない」っていう信念が僕らの中にようやく生まれて作った作品で…最初から配信ストアで出すって決めていたので。
2020年の夏から作り始めて年末にリリース出来た、という感じです。

その上で、先に出来た曲を基にアルバムとしての統一感を持たせようとしたので、ハイパーポップ寄りのもので揃えました。
なので(『R-RATED』をもって)ハイパーポップのクルーだと認識されるのは全然嫌じゃないですし、ありがたいです。
ただ、「今後もハイパーポップをやっていくクルー」だと思われるとそれは違うぞって感じですね。
その時々でメンバーが聴いてるものによって変わっていくと思います。



─中でもBENXNIさんが手掛けた"star island", BENXNI & goonyears名義での"MATTE"は特にド真ん中のハイパーポップですね。

BENXNI:
そうですね、特に"MATTE"については「こういうのがウケるんやろ」と思って狙っていった感はあります。
分かりやすいからこそ1曲目に持ってきた部分もあって。

"star island"については…これMVを沖縄で撮ったんですけど、実は撮影日の前日に僕の家にみんな集まって1日で作った曲です。
「MV撮る為に沖縄行くぞ」っていうのが先にあって、そのために作ったっていう笑
そしたら思ったよりMVが伸びたって感じです。
むしろほんとは"Make It Loud"の方が「ヤバいのが出来た、これはミリオン行くんじゃね?」って思ってたんですけど、リスナーの反応は中々読めないですね。

他には"Bad News"も僕の家で1日で作って、その場でMVもDIYで撮り切った作品なので思い入れがあります。
この曲はその場のノリでいけちゃう、STARKIDSのエナジーが詰まってる感じはします。
あとは"All Stars"の自分のHOOKは音の嵌め方が気持ち良くて気に入っています。



─『R-RATED』を出したあとの周りの反響はいかがでしたか?

BENXNI:
僕はあまり直接フィードバックを受けたことはないんですけど、周りの雰囲気を見てると反響はあったんだなって思っています。
結構色んなところから「話を聞かせてくれ」みたいな引き合いも来てますし…STARKIDSとしてはもっとガッツリ有名になろうって思いはありますね。



─なるほど、楽しみですね。
 最後に、今後の予定について教えて下さい。

BENXNI:
まずはさっきの通り、ちゃんと有名になる為にやるって方針です。
その為にもまたSTARKIDSとしてEPやシングルはどんどん出そうかなと思ってます、アルバムは今のところないかな。

そして面白い人がいればジャンル関係なく一緒にやってみたいですね。
もちろん僕個人としての活動もやりますけど、それよりはSTARKIDSとして上がっていきたいなと思ってます。

まずはSTARKIDSとして"SEVENTH"がシングルで出たので聴いて欲しいですね。
これからも頑張るので聴いて下さい。




─ありがとうございました。


以上(2021/03/04)
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作品情報
STARKIDS『R-RATED』


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