インタビュー:2ikKen - HIPHOPで誰かを救うということ





それはきっと、なんの気なしに投下された。
2020年9月にさらりと配信リリースされ、特に告知や宣伝活動もなされなかった3曲入りのシングル。
2ikKen 『2IGHT CAPSULE』は、本人にとっても「まずは投下してみた」くらいの感覚だったろう。
しかし収録された3曲のレベルの広さが耳の早いヘッズに伝わると、あっという間に各種プレイリストに選曲。
その後代表曲"TOKIO STAR NiGHT"のMVを國枝真太朗監督の下でPRKS9から公開、既にバズの様相を見せ始めている。

2ikKenとビートメイカーのkiz vil.が作り出したうねり。
その背後には「なんとなく音楽を始めた」のではなく、「自分はアーティストにならねばならない」と決意する、断固たる意志があった。



登場する主なアーティスト(順不同):
4s4ki、JJJ、Only U、BBY NABE、LIL UZI VERT、OZROSAURUS


 15歳での大切な人との別れ、人としての「正しさ」が揺らぐまで



─本日はよろしくお願いします。

2ikKen:
よろしくお願いします、2ikKen(ニッケン)です。
今20歳で、横浜に住んでます。

MCネームについては本名が由来になってます。
MCネームを考えるとき、他のにもしようかなと思ったんですけど、
あまりにもこの名前が自分の中で浸透していて、他の名前で呼ばれるのが想像出来ないなと思って。
ライブとかで別の名前で呼ばれても反応出来ないなと思って、これにしました。

表記はローマ字表記ではNIKKENなんですけど、見栄えを考えて2ikKenにしました。
2をNに見立てているのは、オルタナティブアーティストの4s4kiさんが、4をAに見立てているのを知って、面白いなと思ってやりました。
尊敬してるアーティストの1人ですね。


─元々の音楽的な背景は?

2ikKen:
元々小学生の頃から音楽が好きで、J-Popを中心に聴いてました。
特に、自分の世代からは一世代離れた、15〜25年前くらいの間に出てきたアーティストはよく聴いてます。
例えば小さい時に自分の母親が宇多田ヒカルの『First Love』を聴いてたりしてて、自然に宇多田ヒカルは聴いてました。

あとこれも母親のウォークマンを借りてよく流してたのがmoumoonでした、今でもよく聴きます。
他にもミスチル、椎名林檎、中島美嘉…そんな一世代前の人たちが聴いてたような音楽を流してた感じです。
今はHIPHOP中心ですけど、J-Popも聴き続けてます。




─そのあたりの原体験は、今の音楽制作の際に影響を与えてたりしますか?

2ikKen:
意識的にはしてないんですけど、自分はグルーヴ感をどうやって出すのかみたいなのは考えて作ってて。
そんなときにHIPHOP以外のジャンルではどうやってメロディを出してるのか、グルーヴを作ってるのか、とかは気にするようになってますね。


─そこからどうやってHIPHOPに興味を持ったんでしょうか。

2ikKen:
HIPHOPを聴き始めたのは15歳くらいからです。
それまではほんとにJ-Popばかりで、HIPHOPに触れたこともなかった。
でも15歳くらいの時に自分が大切に想ってた人との別れを経験して。

結構それまでは、自分の中で「正しい人間像」みたいなのがあって、それに従って生きてきたんですよ。
でもそんな人間像が、その別れで一度否定された感じになって…「それって正しくないのかな」って思い始めた。
じゃあ結局どうすれば良かったんだろうって考えて……答えが出なくて自分の頭の中で葛藤していくうちに、なんか何もかも信じられなくなって、周りともうまく接することが出来なくなる時期があったんです。

自分としてはそれが結構大きな出来事で。
自分の人間性がここまで変わっちゃうのかってくらいの転換期でした。
でもその一方で周りの環境は変わらず同じ感じが続いてく。
そんな中で、周りと同じ音楽が聴けなくなってったんですよね。

そんなときに…もしかしたら高校生ラップ選手権とか見たのかもしれないですけど、HIPHOPに出会って、それで曲を聴き始めました。
それで聴き出すと、テレビで言えないことや思いを歌ってる人、社会的には受け入れられてない人たちの痛みや苦しみを表現してるような歌がたくさんあって。
そういう姿って社会では見てみぬふりをされることも多い中、そんな表現をしてる人たちがいるんだ、って興味を持ちました。


─HIPHOPにハマって、最初はどんなアーティストを聴いてたんですか?

2ikKen:
最初はどんなところから聴けばいいのか分からなくて笑
とりあえずネットで調べて、「この人たちは聴いとけ」系の記事を見つけて、ANARCHY、SEEDA、ZEEBRA、SALU、KREVA…みたいにとにかくレジェンド達のを聴いてました。
そこから自分の好きなタイプを掘り下げていって……あ、あとOZROSAURUSも好きでした。
OZROSAURUSも、「ザ・ラッパー」みたいな風格に見えるんですけど、リリックを聴き込んでいくと意外と繊細な部分とかが見えてきて好きでしたね。

あとはそこからFla$hBackSの3人(Kid Fresino、febb、JJJ)を聴いたり。
あとその頃海外でトラップが流行り始めた時だったので、その辺も聴いたりとか…とにかく最初の頃は何でも聴いてました。


─そこから段々、内面的な描写を得意とするアーティストに惹かれていった?

2ikKen:
そうですね、例えばXXXTENTACION、Lil Peep、JJJ、4s4ki、電波少女、GOMESS、TYOSiNとかは凄く尊敬しています。
自分は全然乗れるトラップとかも大好きだしよく聴くんですけど、やっぱり自分の原体験を救ってくれた、癒してくれた人たちはそういう系統です。





 「なんとなく音楽をする」のではなく、明確に「自分も誰かを救う」為にアーティストになる



─ラップを始めたきっかけは?

2ikKen:
ラップはもう知ってからずっと始めたいと思ってたんですけど、そもそも周りにHIPHOP好きな友達もいないし、自分も部活とかあるし…みたいな状況で。
でも自分の中ではやることがもうHIPHOPしかないって思ってたんで、高校卒業したら絶対やろうって思ってました。

なんと言うか、普通にHIPHOPが好き、みたいな感じならリスナーのままでも良かったんですけど、
自分としては、HIPHOPの「人に打ち明けられないようなことも歌詞にして書き出して他の誰かも癒す」っていうところに凄く救われたので、自分も同じことがしたいってずっと思ってました。

そこから実際にラップの制作を始めたのは2020年の2月くらいからですね。


─じゃあ、「なんとなく楽しそうだから始めよう」というよりは「俺はHIPHOPを始めて誰かの救いになる」という確固たる思いがあって始めた?

2ikKen:
そうです。
今思うと、高校生くらいの時とかは自分も精神的に結構いっぱいいっぱいで、HIPHOPを聴いたり、調べたりしてる時間が唯一楽しい時間だったんで。

自分の学生生活について詳しく言うと、元々中高一貫校にいて、同じ仲間で6年間過ごしたんですよ。
で、それこそ中学時代…15歳くらいまでは、野球部のキャプテンもやって人前に出たがるようなタイプでした。
どっちかというと活発な方だったんですけど、それが別れの経験とかからガラッと変わって、人と話せなくなっちゃったんです。
自分の中でも思いが絡まって、人と上手くコミュニケーション出来なくなった。

それをこじらせて高校卒業くらいまで続いて…その間はずっとHIPHOPに寄り添って貰ってた感じです。
だからそういう時間を与えてくれたアーティストさん達には本当に感謝してますし、自分もそういう存在になれたらと思ってます。


─そこから2020年2月に制作を開始して、最初に出来た曲が"Poker Face"だったと。

2ikKen · PokerFace (prod. kiz vil.)


2ikKen:
そうですね、2月の中旬に、取りあえず作ってみようと思ってSoundcloudに上げました。
やっぱり自分でも作ってみて、この曲はまだまだ駆け出し感があるし練習が必要だなとは思ったんですけど、(『2iGHT CAPSULE』をプロデュースした)kiz vil.も同じ2月に制作を始めてこの曲を作ったんですよ。
で、2人の中で「この感じならもっと行けるな、やってみよう」ってなって、2人で制作を続けることを決めました。

別にアーティストの知り合いが他にいる訳でもないので、『2iGHT CAPSULE』は自分とkiz vil.、あとエンジニアをしてくれたUsnowさんという方の3人で作り上げた感じです。


─いまお話に出てきたkiz vil.さんが今回の『2iGHT CAPSULE』をフルプロデュースしている訳ですが、お2人の出会いや制作に至る背景を教えて下さい。

2ikKen:
kiz vil.とは去年の11月に出会いました。
BAYSIDE MOTIONって横浜の箱がオープンした時で、その時のゲストがKid Fresino、kzm、ゆるふわギャングで。
横浜は自分の出身地なんで、このメンツが来るなら行くしかないと思って1人で行ったんですよ。
それでイベント入る前に列作って並んでた時に、横にいたのがkiz vil.でした。

周りは結構友達とかと来てる中でkiz vil.は自分と同じく1人で来てる感じがあったんで、自分から話し掛けてみたんです。
で、そっから喋ってるうちに…意気投合って程ではないですけど「一緒にライブ観ますか」ってなって。
結局ライブが終わって帰り道も一緒に話して、そこで「じゃあまた機会あったらライブ観に行こう」ってなりました。

次に会ったのが釈迦坊主主催のTOKIO SHAMANで…また2人でライブ観て、帰ってご飯食べてる時に……どっちから切り出したか覚えてないんですけど、「実は自分トラック作りたい」「実は自分ラップしたい」ってなって、じゃあ1曲作ってみようってなりました。

そこからLINEで制作のやり取りが始まって、2月の頭には「こんなトラック出来た」って連絡が来ました。
それが"Poker Face"のトラックですね。
だからkiz vil.も"Poker Face"が1作目で、そこから『2iGHT CAPSULE』の3曲を作った感じです。


─また"Poker Face"の話に戻りますが、あの曲はかなり『2iGHT CAPSULE』の雰囲気とは異なるビート、ラップスタイルですよね。
 内面性を描く方向は同じですが、もっとゴリゴリのトラップで。

2ikKen:
そうですね、あれを作った次の曲が(『2iGHT CAPSULE』収録の)"Moonlight"だったんですよ。
そのときは4s4kiさんを聴いてたのもあって、もっとオルタナティブ寄りのものを作ろうと思って、結構作風が変わりました。
その"Moonlight"の感じを軸に展開したのが『2iGHT CAPSULE』だって位置付けになります。


 それは例えばLil Uzi Vert『Eternal Atake』(2020年)の"Baby Pluto"で。



─そこから『2iGHT CAPSULE』のEPを作ろうって流れになったと。

2ikKen:
当初は特にEPとかって考えてた訳じゃなくて、とにかく"Poker Face"の次の作品として"Moonlight"を作ってみようと思って。
で、"Moonlight"の制作中に、自分の中で鼻歌とか歌ってる時に良いメロが浮かんできたんでkiz vil.に送ってみたら「めっちゃ良いね」ってなって"Dreamin'"が出来ました。
この2曲が出来た段階で、どちらも浮遊感とか共通してるし、EPで作ってみようかって話が初めて出てきました。
それで最後に出来たのが"TOKIO STAR NiGHT"です。

さっき言った通り、自分とkiz vil.、エンジニアのUsnowさんの3人で作った作品なんですけど、
完全分業って感じじゃなくて、自分もトラックに口出しするし、Usnowさんもレコーディングの仕方についてアドバイスするしで、みんなで作った感じです。


─『2iGHT CAPSULE』は「夜(から朝)」と「自分や周りの孤独」が前面に押し出た作りだと感じますが、このEP全体の位置付け・狙いを教えて貰えますか?

2ikKen:
EPにしようって決めたとき…"Moonlight"が出来て、"Dreamin'"を制作してるときに段々決めてきた感じです。
EPの狙いを考えた時、孤独……他者との孤独もなんですけど、自分自身が迷う時期があった中で、自分自身の中にいる色んな自分がそれぞれ孤独を感じてるみたいな、そんな自分の中の孤独も考えてみたくて。

そういうことは普段から結構考えたりもしてて。
むしろ他者以上に自分の中の何かが自分に牙を剥いてくることもあったりすると感じていて。
で、夜って言うと特にそんな自分の内面と向き合う時間帯だったりするので、そういう時間帯にそういうことを考えちゃうっていうことで「夜」と「孤独」っていうテーマが出てきました。


─なるほど。じゃあ"TOKIO STAR NiGHT"の「微笑むshowtyほどwanna cry」というラインなんかが代表的ですが、 他者の孤独への目配せもあるものの、どちらかと言うと自分自身の内面での孤独に重心を置いている?

2ikKen:
そうですね、でもまあ両方って感じです。
自分の中にも、他者との間にも孤独はあるので、どちらも描いてる感じですね。


─葛藤や苦しみをリリックの端々に込めつつも、kiz vil.さんのビートも相まってあくまでナーバス・ダウナー過ぎる作りにはなっていないのが印象的です。
 リリックを読み解くとかなり重たい部分もあるのに、誰にとっても非常に聴き易いというか。

2ikKen:
そうですね、ここはかなり考えて作ってるポイントです。
最初に出来たのが"Moonlight"で、この曲は割と重めな雰囲気が出てたので、なんとなくEPのアイデアが出てきた段階でこの曲は最後かなと思っていました。
そうした場合にそこまでの繋ぎはどうしようかな、って考え方になりました。

それで最初の"TOKIO STAR NiGHT"はキャッチーな作りにしてますけど、これは例えばLil Uzi Vert『Eternal Atake』(2020年)の2枚目1曲目で"Baby Pluto"ってあるじゃないですか。
あれもイントロから世界観に引き込むための曲、みたいな感じですけど。
今思うとあの辺の影響もあるのかもしれないです。
このEPにおいても「現実からの逃避」ってのはテーマのひとつとしてあるので、ある種現実離れした雰囲気から始めたかったので"TOKIO STAR NiGHT"を最初に持ってきてます。



加えて、"TOKIO STAR NiGHT"は……渋谷とかのイメージなんですけど、周りがキラキラしてて楽しそう、その中で余計に自分の惨めさが際立つ、みたいなリリックになってます。
で、多分周りで笑ってる人たちもそんな孤独を抱えて歩いてるのかもしれない。
そんな意識が他者への目線になってます。

だから煌びやかなビートとリリックの孤独感の対比、みたいなのは意識してます。


─なるほど。作品の導入として引き込む為の役割と、街のきらめきと孤独の対比という曲中の構造と、2重に役割を持っていて凄く考えられた作りですね。

2ikKen:
ありがとうございます。
あと"TOKIO STAR NiGHT"は名前の通り東京を意識して書いたんですけど、逆に"Moonlight"は地元から見る月、という視点になってます。
なので街から始まって、最後は地元から見る景色の視点になる。
それに従ってリリックもどんどん内面性が高まる。
そんな構造になってます。

ただ、自分の中では明確な思いや風景があって作ってるんですけど、一方でなるべく明確な表現とかは避けて、ぼんやりした詩にしています。
個人的にJJJさんや4s4kiさんも同じような感じかなと思っていて。
恐らく自身の中では明確な風景があるけど表現としては抽象化してるというか。
自分もあえてそうすることで、だからこそ他の人が自分に投影しやすく、100人いれば100人の解釈があるような、そこの自由は持たせたいなと思ってリリックは書いてます。

自分としては作って終わりではなくて、届けて聴いて貰って初めて終わると思ってるので。
ちゃんと100人に届けば100人の捉え方があって良いかなと思って作ってます。


─それは作詞の姿勢として重要なポイントですね。
 日本のHIPHOPにおいても物凄く乱暴に分けると、再解釈の余地がないくらい自分を主語にして語るスタイル(ANARCHYやSEEDA等)と、
 自己表現をしつつ、あえて表現を抽象化して語るスタイル(JJJ等)があると思いますが、2ikKenさんは作詞の方向性的には後者だと。

2ikKen:
そうですね、でもあくまで今回はスタイルとしてそうだったっていうことなので。
今回は再解釈の余地がある形を意識したって感じですね。



─"Dreamin'"からは一気に「自分と君」の視点にフォーカスした物語になります。
 夢の中だけ見ていたい、朝になって現実を見たくない、という思いがそれでも非常にメロディアスに描かれていて聴き心地の良い曲になっています。
 この曲の背景はご自身の最近の体験からでしょうか。

2ikKen:
そうですね。
当たり前ですけど、夜寝たら次来るのって朝じゃないですか。
自分にとっては高校生活は嫌いじゃなかったんですけど、当時は辛い思いもあったんで、朝っていうのは学校に向かう、憂鬱な時間だったんですよ。

で、J-Popとかだと「誰でも夜は明ける」「朝が来て欲しい」みたいな表現が多い印象で。
自分にとっては逆で「夜は明けて欲しくないし、朝は来て欲しくない」存在だったんですよね。
そんな思いで、夜の葛藤というか、夢の中に逃げてしまいたいっていう思いを書いてるのが"Dreamin'"です。

一方で「君」の視点にフォーカスしたというのはちょっと違う側面があって。
恐らくHOOKで「目を閉じて夢の向こう 君とならどこまでも」って歌詞があるのでそういうフォーカスだと思われると思うんですが、
これは実体験として、高校の卒業以来会ってなかったあの人に夢の中でふと会えて、ビックリして目覚めた、みたいな体験があって。
そんな漫画みたいなこと実際にあるんだって思って驚いたし、その人とは全く何にも進まなかったんですけど、夢の中だけならどこまでも、みたいな思いがあって、そこから来てますね。

ただそういう体験を踏まえつつも、あくまで「夜が明けるのが辛い」人たちみんなに向けて書いてます。
これもあくまでリリックは抽象化することで、その人それぞれにこの曲が寄り添って解釈してもらえるようにしています。
「売れて欲しい」というよりは、色んな方に届いて欲しいっていう思いです。
もちろん売れれば最高ですけど、売れるときにはそれに見合うアーティストになってたいと思いますね。


─"Moonlight"は唯一ダウナーに寄せた雰囲気が見て取れます。
 先ほどのお話しにあった通り最初に出来た1曲なので、このEPで一番今作の孤独感の原型が見えているような感じでしょうか。

2ikKen:
そうですね。
さっき言った通り、この曲はEPのこととか考えず、まずは"Poker Face"の次の2曲目を作ろうって流れで始まって。
2020年2月くらいに4s4kiさんのライブに行ってて、帰ってる途中にkiz vil.から「こんなビート出来たけど」って連絡が来たんですよ。
それが8小節分のオルタナティブなビートだったんですけど、それが自分としては凄くハマってすぐリリックを書き始めて。
それからkiz vil.にも4s4kiさんの曲とかを送って参考にして貰いながら作り上げていきました。
かと言って出来上がりが4s4kiさんぽいかと言ったらそんなことはないですけど。
でも自分のその時の思いを音に拾って貰って、一番原型のまま入れた曲って感じですね。


─確かに、4s4kiさんの名前が各所に出てくるものの、出来上がりがそれっぽいかというとかなり2ikKenさん特有のグルーヴ感になってますよね。

2ikKen:
やっぱり他にも意識的・無意識的に影響を受けてる人もいるでしょうしね。
加えて、アーティストさんたちのことは尊敬しつつ、自分の曲を作る際にはそれぞれは……悪い言い方をすると材料に過ぎないというか。
自分自身の器の中に必要な雰囲気とかだけ持ってきて、自分のものとして吐き出すっていう意識ですね。

例えば"TOKIO STAR NiGHT"とかはOnly Uとかの雰囲気も入り口では参考にしてたりしたんですけど、出来上がりはやっぱり全然違うものになってると思います。
自分はOnly Uの”Shooting Star feat.Sleet Mage”(2020年)がめちゃめちゃ好きで。
毎日聴くくらいなんですけど、あの雰囲気とか、さっき話にも出したLil Uzi (Vert)のキラキラした感じとか……それこそゲームミュージックをサンプリングしてみないかとか。
その辺のものを入れ込んだ上で、自分のものとしてアウトプットしてます。


─"Moonlight"のラストでイントロがあえてリフレインします。ここの狙いはどこにあるんでしょう。

2ikKen:
元々作り始めの時、イントロ部分のボーカルがHOOKになるのかなと思って作ったんですよ。
kiz vil.との曲作りではトラックの一部が送られてきて、それに「これはHOOK部分かな?」みたいな感じで取りあえずラップを乗っけて送るみたいな感じでやってて。
それで出来たのが最後にリフレインしてくる部分です。

この部分は自分の内面とかが良く書けたなと思ってる部分で……そっからヴァースを書いてった時に実際のHOOKが出来て、って感じです。
それでHOOKは別のが出来たんですけど、これイントロとアウトロで繰り返すの面白いなと思いました。
構成上も、これが最後に来ることで静けさが最後に来て、ある種我に返るみたいな余韻が生まれるので良いなって。
なので曲の構成は作りながら考えていってるので、こういう形になりましたね。


─そして"Moonlight"のラストで、ハッピーエンドとまでは言わずとも取りあえずのアイデンティティを見つけて前を向くことで、このEPは幕を閉じますね。

2ikKen:
そうですね。
この曲に関しても明確に思い描いていることがあって…地元の横浜の風景なんですけど、夜の帰り道、一人で音楽を聴きながら帰ってる時に見る月、という情景で描いています。
やっぱり夜の一人の帰り道って自分の内面を凄く考える時間になると思うんですけど、そんなときに出ている月の光。

それから「君」っていう存在が、自分のみじめで孤独な内面とは対照的にまぶしい存在だ、という意味でもあります。
なので自分としては、その存在は憎みたい程の存在であったりもして、それがきっかけでつらい経験もしたけど、一方でそれがHIPHOPを聴き始めたり、色んな人と出会うきっかけにもなった訳で…。
もう今となっては連絡とかも取り合わない関係だけど、それでも結果的に自分を照らしてくれる存在だったんだ、と。

憎んでもいるけど、でもお陰で良いこともあったな、みたいなアンビバレントな気持ちです。
自分の中でも色んな感情を持ってる自分がいて、その自分たちを全部吐き出してる曲なので。
だからプラスもマイナスも良いも悪いも詰まってる曲になっていますね。


─ありがとうございます。
 今後の動きについて、予定しているものがあれば教えて下さい。

2ikKen:
まずは…こんな情勢下ですが、ライブしたいですね。
あとは制作についてもkiz vil.と話をしてます。
やっぱり思った以上に『2iGHT CAPSULE』の反響が大きかったので、この勢いを殺さずに次の曲を出したいなと思ってます。

その流れで、今後は1/14(木)にシングルをリリース予定です。
2曲入りで、1曲は完全新曲の"PLANET"、もう1曲は"TOKIO STAR NiGHT"のREMIXで、こっちは客演で関西のLo-keyBoiくんが参加してくれます。
Lo-keyBoiくんもこの曲を気に入ってくれてたみたいで、お互いインスタ経由で繋がってから「是非一緒にやろう」という話になりました。
元々Michromeへの客演とかもちろんソロ作とかを聴いていてイケてると思ってたアーティストなので、リリースが楽しみです。


─なるほど、楽しみですね。
 これからもビートメイカーはkiz vil.さんと、という感じですか?


2ikKen:
kiz vil.とも話したんですけど、これからもずっと2人でやるってつもりではないです、悪い意味じゃなく。
色んなトラックメイカーを紹介頂いたりもしてるので、自分としても他のトラックに乗るとどうなるのかなって興味はあります。

共演って意味では、今後自分がハマってるOnly Uくんとか、4s4kiさん…BBY NABEくんは一緒にやれたら良いなと思っています。
2月くらいにOnly UくんとBBY NABEくんが出てるライブに行ったんですけど、やっぱ見ててヤバいなと思ったので。
同世代の筆頭として尊敬してます。

なので今後、kiz vil.とはタッグを組みつつもお互い自立していけたらな、と思ってますね。


─ありがとうございました。

以上(2021/01/02)
───

作品情報:

2ikKen 『2IGHT CAPSULE』


(ジャケットクリックで配信先にジャンプ)

Track List:
1.TOKIO STAR NiGHT
2.Dreamin'
3.Moonlight

Artist: 2ikKen
Title: TOKIO STAR NiGHT
Label: 2ikKen
2020年9月11日リリース

アーティスト情報:
2ikKen:
横浜在住の20歳。
15歳の時、何もかも嫌になり塞ぎ込んでいた際にHIPHOPと出会う。
社会的には受け入れられていない人たちの痛みや苦しみを表現するHIPHOPの側面に救われ、自身もアーティストを目指す。
2019年末にビートメイカーのkiz vil.と出会い、意気投合したことで音楽活動を本格化、SoundCloudに試作曲をアップしながら、2020年9月に3曲入りシングル『2iGHT CAPSULE』をリリース。
完全にノンプロモーションながら各種プレイリストインを果たす。

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