Column/Interview

独自の浮遊感を纏った兵庫出身のMC・Cuffboiの2nd EP。
2021年2月6日各種配信ストアでリリース。

Track List:
1.無重力FLY
2.Haze! feat. Luvit
3.Love cloud feat. YUNGYU
4.EXCEPT feat. cyber milk, ibu & izolma
5.Maison空時
6.error
7.arrrrrhythmiaaaaa!!!

Cuffboiというアーティスト


兵庫県出身で中国のクオーターだというCuffboiは、にわかに盛り上がりを見せる日本のオルタナティブHIPHOP / ハイパーポップ界隈でも一際目立つ存在だ。
自身を「ハイパーポップの中心です」と語る通り、その作品には確かな力が宿る。
常に「宇宙と自分」を視座に置き構築される音楽はどこかふわりとした心地良さを持ち、同時に一種のはかなさを併せ持つ。

2020年中頃から作品をSoundCloudを中心にアップしてから同年10月にリリースした1st EP『Cockpit』はその代表作だ。
タイトル通り宇宙に向かう自分の視点を含みつつも、その裏にエナドリの散らばった夜の部屋が見える、どこか退廃的・閉塞的な「ここ」から抜け出す窓の外を描いたような筆致が印象的な作品だった。

それから4か月。
Cuffboiは更なる傑作『Electric Love!』(2021年)を持って帰ってきた。
そこには前作からの流れを汲んだ「宇宙と自分」の視点や、閉塞感と浮遊感の両立といったバランス感に上積みがあるのはもちろんのこと、曲ごとのエネルギーの向けどころや、コンセプトの置き方、作り込み度合のオンオフといった「勘所の良さ」が抜群にパワーアップしている。

今回はそんな『Electric Love!』をCuffboi本人に解説してもらった。
それはハイパーポップ的にぐちゃっと混ぜ合わされたカラフルな色彩をひとつひとつ説明する作業だ。
Cuffboiがパレットからぶちまけた色の数々を丁寧に見ていく中で、これまで感知出来なかった色味や質感に気付く。
本稿がそんな役割を果たせれば幸いだ。

(2021/02/23 by 遼 the CP)

EP解説 by Cuffboi


─アルバムタイトル『Electric Love!』について

タイトル名のElectricは電子的で最先端を走りたいという思い。
Loveは自分の考え方や、愛について深みのある心情を表したくてこの2つの言葉を繋ぎました。
ただポップに寄せたかったので、エクスクラメーションマークを最後に付け足して全体的に前向きなEPに方向性を持って行きました。

『Electric Love!』のタイトル名ですが、実はLBとOtowaの”Internet Love”(『インターネットラブ』(2012年)収録)という曲からヒントをもらいました!
(あの作品のように)いつ聴いても最先端な曲達でいて欲しい。
そんな思いをタイトル名には何より強く込めています。

─ 1. 無重力FLY について

まず、この曲はMVを出しています。

自分の周りにBEX COO ADYというラッパー兼エディターが居て、彼に撮影・編集をしてもらいました。
彼は僕の好みやスタイルを100%理解してくれているので、凄く気に入ってるMVです。

この曲は「とにかく悩み事は宇宙と比べて」というコンセプトで制作しています。
トラックは大好きなsnorkatjeから購入しました。
着地点のないフワッとしたトラックが大好きで、自分の声質も引き締まりがあんまりないので相性が良くて。
着地しきらない、浮遊している曲としてすぐに完成しました。

注目してほしいリリックは
「最近あったことを思い返しても銀河と比べると勝てる気がしないんだ。これで100戦0勝、本当ちっぽけな俺と思ったと同時に幸せもんだね」
という部分です。
これは絶対他の人には書けないと思います笑
何か人生で葛藤している事や辛い事がある時に聴いて欲しいですね。

─ 2. Haze! について

この曲はMCバトルでも活躍しているLuvitとの曲です。
hazeは霞むという意味ですが、宇宙にいて、視界が霞んでいて、この先どこに向かうんだろう?という不安とポジティブを彷徨っているような
曲にしました。

HOOKで、
「俺らこうしてどこに向かう?星の向こう?何億光?」
というリリックがあります。
これはポジティブな意味で視界が霞んでるところへ突き進んでいこう、と思って作りました。

元々自分の声がハスキー寄りな部分もある為、声が透き通るLuvitを人選しました。
彼は滑舌が良いだけでなく、音感も有りますし、語彙力も豊富なので、曖昧なHOOKからどう受け止めてバースを蹴って返してくるのか楽しみな曲でもありました。
彼らしいバースが返ってきて満足しています。
あと、彼最近RabbitからLuvitに改名しましたね、良いと思います笑笑

─ 3. Love cloud について

こちらはYUNGYUくんと制作した1曲で…既に先にシングルでリリースしていたものをEPに入れました。
今回のEPの中でも特にパワーある一曲です。
PC,携帯などの機器にはストレージがあるじゃないですか。
それと同じで人間にも容量があると思っていて。
人間の容量をiCloudに例えて、「愛が溢れて止まらないよ」と表現する中でこの曲が完成しました。

元々この曲には絶対YUNGYU君を誘うと決めていて…YUNGYU君しかハマらないとまで思っていました。
YUNGYU君は僕自身がリスナーで聴いてる時から、ずっと一緒に曲を作ってみたいと思っていた存在だったので、制作出来るってなった時は夢みたいでしたね!

コンタクトが取れてからは電話で制作や自分達のスタイルの話等を詰めて…だからかなり丁寧かつ方向性がきちんとまとまった曲になったと思います。
今後もYUNGYU君とも活動の場が増えると思うので、楽しみにしていて欲しいです。
僕にとって大好きな先輩です。

─ 4. EXCEPT について

この曲はEPのリード曲です。
まず、”except”は取り除くという意味があって…元々単純にカッコいい英語で、訳してもかっこいいカタカナを探していて、”except”ってかっけぇ!ってなりました笑笑

モロにハイパーポップな曲なんですが、この国にまだちゃんと根付いてないジャンルだと思いますし、BPMも速いのでマイクリレー形式でやれば確実だなっと思い、今回の3人を選びました。

自分のリリックについては、バーチャル・近未来・都会の冷たさを感じさせるワードを揃えたいなと思い、「街」, 「EXCEPT」, 「ネット社会」, 「電子タバコ」, 「PC」, 「ストロボ」など、頭で思い浮かべた時に非現実的な世界や、電子的な場面を連想させる言葉でガチっと縛って書きました。

フロウの面で注目してほしいのは「深く被ったパーカーのフード、電子タバコふかす」の部分ですね。
この曲はまずこのフロウを思い付いて作り始めた曲です。
このフロウがフワッと頭に浮かんできた段階でヤバい曲になりそうだなと思い形にしていったんですが、リリックも方向性もある程度決まってきた段階で、3人に声をかけました。

構成としては1Verse目に僕が入り、生きることの気だるさや自分の才能を信じていると歌って。
2Verse目はcyber milkに入って貰いました。
彼女は今個人的に1番注目しているフィメールです。
自分のスタイルとの相性も良くて、韓国勢のアーティスト含め、既にいくつか曲を制作していたので、特にこういう風に作って欲しいっという頼みもせずに彼女のVerseが返ってきました。
やっぱり彼女はリリックが独特で、かつ音感やリズム感に優れていて。
早い段階でリスナーにこの曲の方向性を理解して欲しかったので、彼女の配置を2番目にしました。

3Verse目にはibuに入って貰いました。
彼とは2人で作っている曲も多く、共作を始めてもうすぐ一年になります。
流れるようなフロウからタイトなものまで、中だるみしがちな中盤だからこそ、彼に良い意味で流してもらいました。
期待通りのVerseだったので満足しています。

4Verse目はizolmaを配置しました。
彼はもともとスタイルが近く、REC,ミックスのスペックが高いので、イヤフォンで聴いた時の左右パンニングが気持ち良いですね。
やっぱり相性が良くて、彼から出てくるワードもこの曲全体のバランスをみて出てくるワードが多かったのでバチッと締めてくれる素晴らしい曲になったと思います。

“EXCEPT”みたいに多人数でコンセプトをガッチリ詰めて作る形式は、日本でしているアーティストはほとんど見かけない気がします。
「とりあえず客演入れるか」みたいな形がこの国では主流になり過ぎていて、誘った人と客演した人とが別々の曲を歌っているみたいなスタイルが多くて…個人的には同じに聴こえていました。
そんな思いもあったので、1曲をみんなで仕上げるっというスタイルに拘りましたね。

今後このハイパーポップなスタイルは僕自身のベースにもなると思います。

─ 5. Maison空時 について

これはオルタナティブなテイストが強い曲です。
リリックを噛み締めて欲しくてロック寄りな曲に仕上げました。

この曲は夕方に書いた曲で…リリックは電車に乗っている30分くらいの間に、その時の感情をそのままメモに残しました。
コンセプトとしては「自分は1人の時間が必要だ、でもあなたも必要だ」という、割り切れない歯痒さのある一曲です。

曲の中で、気に入っている部分は次の箇所。

「Ohh,締め切ってた窓、今は開け日が差す未来と過去、俺の背に加護、取り外し可能のファーを外したアウターを見て何度目の春?」

語尾で全て韻を踏んでいて、僕にしかできないフロウで僕にしか出来ない踏み方をしています。

どのリリックにも全て自信がある曲なので、たくさん聴いて欲しいですね。

─ 6. error について

これは沈んでいた時に作った曲です…自分がよれていた時にすぐに完成しました笑
海外志向の一曲にしたくて、HOOKも日本では見かけないようなR&Bテイストに仕上げています。
元々自分は中国の血が入っているので、もしかしたら国内っぽさみたいなのが欠けている分、独特なメロディが思いつくのかもしれない、と思います。

─ 7. arrrrrhythmaaaaa! について


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