レビュー:写楽『mimisoji』by @wadledy
Cracks Ampの一員としても活動する写楽の1stアルバム。2021年1月27日リリース。
Track List:
1.Alibi freestyle
2.Yaaaaa
3.WORKMAN Recommend
4.四十八音図書館
5.あくまのささやき
6.カンフーキック
7.DIVER
8.Miller Man
9.四面楚歌
10.Ceylon tea
11.柿落葉 Recommend
12.どうでもいいさ
13.Kids
14.Higher
15.Octavation Recommend
16.Meyeah
17.BIGELOW
KAKKYやY-HORNETらを擁する多人数クルー・Cracks Ampの急先鋒・写楽。
その初となるフルアルバムはラップ、ビート、Mix&Masteringも含め、全てセルフメイドで仕上げた1作だ。
ミニマルでジャジーな旋律に乗るのは、歌心のある緩くてナードな雰囲気のフロウ。
とは言えダラダラと締まりがない訳ではなく、そこにはしっかりとラップとしてのキレがあり、絶妙な聴き心地だ。
全17曲中に5曲のインストを含みつつ、シンプルで柔らかなBoom Bapビートを自由自在に調理している。
ことさらにHIPHOPの強いスラングを使わずに、ごくごく日常的な切り口で綴るブルーズ。
その中では誰にでもあるような、庶民的な視点の葛藤などが描かれる。
その為本作は正統派なHIPHOPマナーを保ちつつも、親しみやすい日常が日記のような穏やかな筆致で羅列されていく。
無理に起承転結のドラマを辿ることなく、ゆらゆら漂っていく感情の吹き溜り。
音楽に乗せると、些細で他愛もない想いも愛しく大事なことのように聴こえてくる、そんな作品だ。
そんな『MIMISOJI』からいくつか収録曲をピックアップして紹介したい。
イントロとしてのちょっとしたフリースタイルで仕上げた冒頭曲“Alibi freestyle”に続く2曲目が、いきなり穏やかなインスト“Yaaaaa”。
そして待ち構える3曲目がこの“WORKMAN”だ。
(ここまでの構成だけで、自由で開放的なアルバムであることが伺える)
本曲は軽快かつ愉快なノリで、2度あるHOOKからして「溶接する毎日 イマイズミ組長 髭を生やしてる イマイズミ組長 めっちゃ真っ直ぐ」と歌う衒いのなさ。
そこに挟まる、仕事についての簡素なVerse。
それだけの1分30秒なのだが、そこに厳しい日々の労働が凝縮されており、かつその描き方がなんて粋で優雅な彩り豊かなことかと思わされる。
コーラスなんかも入っちゃって、このくらい気楽なフィルターで日々を乗り越えていかないとな…と思わされる。
アルバム中でも特に、ラップというよりも歌寄りな1曲。
初の弾き語りで、アコースティックなギターの音色に、即興で鼻歌を口ずさむような歌声が乗る。
素朴で優しい、人肌の音楽だ。
ドリーミーでメロウなムードの中、歌とラップをリズミカルに行き来する。
他の曲よりも、音と言葉に感情が溢れてしまったような力強さがある。
上記の曲以外にも、ローファイなビートで流れるようにラップする“あくまのささやき”。
ラップのキレを存分に堪能できる“カンフーキック”。
輝かしい感覚を表明する、前向きで陽性ムードの“Higher”。
サラッとあっという間に17曲聴けてしまう、どの曲もコンパクトな作りながら奥深く味わい深い作りの作品だ。
maco marets、NeVGrN、BASI、タカツキ、ZIGENなどが好きな人には特にオススメ。
作品情報:
(ジャケットクリックで配信先にジャンプ)
Artist:写楽
Title:mimisoji
Label:CracksAmp
2021年1月27日リリース
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2021/01/28 Text by わど (Twitter)
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