Kokatu TestarossaとKUVIZMによる1stフルアルバムがリリース, MVも公開
Kokatu Testarossa & KUVIZMによる1stアルバム『FIRE ICE FLASHZONE』がリリースされた。また”Starrrs”のMVも公開された。
Kokatu TestarossaとKUVIZMは、10年来の友人であり、2020年にEP『HAVOC』と2枚のシングルをリリースした。今作は制作期間2年をかけて作成され、両名の人生と日常生活そのものを表した活動の集大成となっている。
Kokatu TestarossaとKUVIZMはほぼ同年齢であるものの活動を開始したシーンは異なる。Kokatu Testarossaはまだニコニコ動画がサービス開始前で掲示板(BBS)で盛り上がっていたネットラップシーン、KUVIZMはトリップホップやエレクトロニカ、ジャジーHIPHOPに影響を受けたビートメイキングからであった。ふたりは学生時代に、共通の知人が開催・出演しているイベントで知り合ったものの、そのときは楽曲の共作に至らなかった。
その後、ともに社会人となり、会社員を続けながらそれぞれのペースで音楽活動を継続し、2018年夏頃にKUVIZMがKokatu Testarossaに楽曲制作の話をもちかけ、共作が始まった。KUVIZMがKokatu Testarossaに、学生時代の時から境遇や性格に共通点を感じ、そしてアーティストとしての尊敬をもっていたことが理由だったという。
アルバムアートワーク、MVともに、Kokatu Testarossa自身が手掛けたこだわりのあるものとなっている。MVはKokatu Testarossaが構成、撮影、編集をおこない、インターネットラップの原点に回帰したような映像となった。加えて2022年6月29日(水)には本作のインストゥルメンタル版となる『FIRE ICE FLASHZONE Instrumentals』のリリースも予定している。
また、文筆家/ライターのつやちゃんから、本作についてのライナーノーツが届いている:
・Introduction
ビートメイカーのKUVIZMとラッパーのKokatu Testarossaが、共同名義では初となるフルアルバムをリリースした。様々なラッパーへのビート提供によってヒップホップシーンで着実な支持基盤を固めてきたKUVIZMだが、2020年以降はそのコラボレーション相手としてKokatu Testarossaとの協業が増えている。EP『HAVOC』での共演も記憶に新しいが、旧知の仲だという二人は、その関係性をさらに成熟させたうえでこの度フルアルバムを完成させた。
Kokatu Testarossaのラップは屍のように沈み、アンニュイの海を漂う。ネットラップ黎明期から活動していたカリスマは、HAIIRO DE ROSSIらを擁するグループBLUE BAGGY HOO RE:GUNZでの活動を経て、近年は釈迦坊主とのコラボレーションでラップシーンに復帰していた。デビューから10数年を経ての、ついにリリースされるフルアルバム。不安、強迫観念、内省、悲観――その中をうっすらと漂う祈りのような訴え。
Kokatu Testarossa & KUVIZMが社会に投げかける倦怠感の結晶が、今ここに解き放たれる。
・Review
重い空気に満ちている。時には、死すらほのめかされる。KUVIZMの繰り出すビートには細部に渡って多彩な音色が駆使されつつも、極めてロウなテンションが貫かれる。Kokatu Testarossaの、ほとんど泣いているようなぼそぼそと発されるラップが乗ることで、どんなラップミュージックよりも暗く重い倦怠感が充満している。
本作には、エモラップが抱えていた苦悩が何一つ変わらず、ただただ苦悩のまま熟されている。気怠さと諦めの間をぐらぐらと揺らぎながら、ほんの一瞬だけ射しこんだ光を頼りに息継ぎをする、限界ぎりぎりの呼吸の集積。重い空気に満ちた無気力な波の中を、メロディのようなものがかろうじて漂っている。
いつだってメロディは死に絶えないことを、私たちは知っている。たとえば、サウンドクラウド・ラップで紡がれる鬱屈としたビートの中で、ギターのアルペジオが鮮やかなフックとして存在するように。ハイパーポップの歪んだ異形の音の爆発の中で、ノイズの合間をすり抜けてポップなラインが聴こえるように。荒廃したディストピア世界においてさえ、私たちは、異なる音程が連なることで線と化す旋律の力を信じている。
低く低く、堕ちていくような声で、「どうせ終わり来るから何/Runnin’ Runnin’ Runnin’/遊びでフラフラ/過渡期も超えた/靴紐どこだ/あの日のどこか」「ダウナーダウナーダウナー」(“Unconsious1”)とつぶやきラップするKokatuに、KUVIZMは鍵盤を中心とした流れるようなフレーズを用意する。これら塞ぎこむような閉じた空間の中で、メロディアスなフレーズが途方に暮れたように放物線を描きながら漂っていく。“F”や“Colorlessfire”に顕著な、ぶつぶつ切れるような単語の羅列は無気力さを肯定し、それぞれが限界ぎりぎりの体勢で動かずに屹立している。
このかすかに漂うメロディを、私は安易に<希望>だなんて呼びたくはない。ただただ沈みゆくビートとラップの間をすり抜けるように旋律が鳴っている、それ以上でも以下でもない。今日も終わり、明日もまた続く。倦怠に暮れる毎日、やるせなさ。
それは、生きること。死に向かって生を重ねること。短い言葉の羅列によって、日々が重ねられること。いつかそれが終わること。誰かの記憶に残ること。
文筆家/ライター つやちゃん (https://twitter.com/shadow0918)
作品情報:
Tracklist:
1.AdminAdmin
2.Zkai
3.Vabapapa
4.Studio Flatline
5.Unconsious1
6.Interlude(Rest in the water)
7.F
8.Sweat
9.ALO
10.Colorlessfire
11.Interlude(The Vibes)
12.Starrrs
Artist: Kokatu Testarossa & KUVIZM
Title: FIRE ICE FLASHZONE
2022年6月15日(水)リリース
All lyrics & Artwork: Kokatu Testarossa
All beats: KUVIZM
Mixing & Mastering: Naoki Izumi
アーティスト情報:
Kokatu Testarossa(コカツ・テスタロッサ)
ラッパー/シンガー/プロデューサー。ネットラップ黎明期より活動を始めたカリスマ。電波少女、Jinmenusagi、オロカモノポテチ、シマダカズユキなどの実力派MCや、MichitaやEsdotなどの個性派ビートメイカーの作品への参加を経て、HAIIRO DE ROSSIやTAKUMA THE GREATを擁する伝説のグループBLUE BAGGY HOO RE:GUNZのメンバーに。そしてEccy主宰のSlye Recordsから念願のアルバムリリースが予定されるも白紙に。その後もマイペースな活動が続く中、2016年頃より釈迦坊主とのユニットCPCPCでEP1枚、アルバム2枚をリリース。2020年に入り[…]サンテンリーダーの初の全国流通シングル「Good bye Nancy」に参加。旧知の仲のビートメイカーKUVIZMとのタッグによりEP「HAVOC」を2020年5月27日(水)にリリース。
Twitter: https://twitter.com/kokatutest
Instagram: https://www.instagram.com/kokatutestarossa/
KUVIZM(キュビズム)
ビートメイカー。1990年代後半以降のロック、ヒップホップ、トリップホップ、エレクトロニカに影響を受け楽曲制作を始める。ピアノやギター、シンセサイザーによるメロディアスな楽曲を主軸としながらも、感性と作曲手法を常にアップデートし、表現の幅を拡げることに挑戦し続けている。モンスターストライクの公式リミックスコンテストでの DÉ DÉ MOUSE賞 受賞をはじめ、ラッパーやシンガーへのビート提供をおこなっている。
【楽曲提供・コラボレーション・Remix実績】
Kokatu Testarossa、DOTAMA、堂村璃羽、LEAP、RICK NOVA、haruru犬 love dog天使、k-over(City Your City)、uyuni、Saint Vega、アイラブヴミー、ELOQ、ハハノシキュウ、Amateras、シラフ知らズ、日高大地、Quja、nate、tip jam、nomaなど。
Twitter: https://twitter.com/KUVIZM
Instagram: https://www.instagram.com/kuvizm