インタビュー: ued - 攻撃準備するシーンの異物





HIPHOPシーンの影で独自の世界を築き上げる者達がいる。
MAKKENZや降神、更に古くはGASBOYS…。
HIPHOPの流儀を確かに継承しつつ、しかし別の宗派としてシーンの外郭を怪しく広げ、深めるアーティスト達はいつだって存在した。

彼らはカウンターカルチャーであるHIPHOPに更にカウンターを撃ち込む存在だ。
こうした異分子がHIPHOP文化の可能性を押し広げてきたことは疑いないだろう。

今の日本のHIPHOPシーンにおけるuedもまた、独自の旗を掲げる異分子だ。
元はロックバンド・ジギジギボーイズのベースとして活動したのち、日本のHIPHOPも貪欲に吸収しソロHIPHOPアーティストとして独立。

その後EP4枚、1stアルバム『2020 Jazz Funk Greats』を発表、各メディアがこぞってその質に驚嘆し、積極的な記事執筆を行った。
驚くべきは、これらの作品群が全て2020年に入ってから発表されたことだ。
ノイズやインダストリアルの影響を受け継いだそのクオリティはどれも高く、リリックの練り込みも凄まじい。
そのリリースペース、練度の裏には何があるのか、そして1stアルバムの狙いとは。

「ビッチがどうとかskrr skrrとか、意味のないことをみんな言い過ぎだと思います。アーティストと名乗るなら、みんなもっと本とか読むべき。そうでないと言葉を扱う資格がないし、言葉に真摯に向き合うことこそが、アートに対してあるべき姿勢だと思う」


登場する主なアーティスト(順不同):
kamui, Itaq, Throbbing Gristle, NIRVANA, 銀杏BOYZ, THE BLUE HEARTS, KOHH, Lil Peep, Earl Sweatshirt, Awich
YDIZZY, Minchanbaby


 Lil Peepを聴いて、「これもHIPHOPって呼んで良いんだ」って


─まずは自己紹介をお願いします。

ued:
uedです、1998年生まれの22歳です、好きな色は青です。
好きな数字は2、好きな動物は猫です。
出身は埼玉の大宮で、今は埼玉県の北浦和に住んでいます。
最近は自分の部屋で…Garagebandでずっと音楽作ってますね。
Logicも使おうと思ってMacBookを買ったんですが、結局使わずGarageBandで作り始めました。
今はあんまり機材に拘りたくないなっていうのもありますけど。


─なるほど、uedさんのサウンドの良い意味でのDIY感は、あえてガレバンで追求したものなんですね。
 元々の音楽との出会いや、聴いていたものなどはなんだったんでしょうか?

ued:
元々は小6の時に親父が持ってたBECKって音楽漫画を読んで、「バンドってカッコ良いんだ」って思ったのがきっかけですね。
そこから地元のTSUTAYAに行って色々借りてきて…中でもNIRVANAにハマって。
で、ボーカルが金髪にしてるし「金髪カッコ良いなー」と思いながら聴いてたんですけど。
同時期に少年メリケンサックって映画も見たんです。
それもパンクバンドの話なんですけど、ボーカル役で峯田和伸(銀杏BOYZ)も金髪で出てて、金髪ロン毛のバンドボーカルになりたいと思いました。
そこから銀杏BOYZに辿り着いたり、親父の聴いてたブルーハーツを聴いたり…これとNIRVANAの3つが原点でしたね。
それで峯田が色んな音楽を聴くんで、そこからグランジやオルタナを掘ったり、あとはロックを掘るところから派生してノイズを聴いたりしてました。



ずっと「金髪ロン毛でバンドのボーカルがしたい」っていう思いは持ってたので、高校も金髪・私服OKのところを選んで入ったんですよ。
そしたら(2014年頃に)入学したくらいのタイミングで金髪禁止にされちゃって笑
ふざけんなよって思って、「じゃあ黒髪ならどんなにロン毛でも、不潔な感じにしてもいいんだな?」って反抗心でロン毛にして、それが今に至ってますね。

その時に「マジで本末転倒なルールってクソだな」って思ったことは凄く覚えてます。


─そこから高校を卒業してすぐに、ジギジギボーイズで活動を始めた?

ued:
そうですね、ボーカルじゃなくベース担当で、横で合いの手を入れたりシャウトしたりする感じだったんですけど。
ただまあ…ベースってやっぱり目立ち辛いじゃないですか。
それで目立ちたい反骨心で、バンドのカラーが赤だったんだけど自分は青をトレードカラーにしたり、もっとロン毛にしたりしてました。
結局ジギジギボーイズとして4年くらい活動して、2019年5月に脱退させて貰いました。


─バンドを辞める以前からHIPHOPとは出会ってたんですか?

ued:
そうですね、高3だった2016年くらいに友達からKOHHやLil Peepっていうヤバい奴らがいるよって教えて貰って。
自分も音楽全般好きなんで掘り始めました。
ちょうどその頃にフリースタイルダンジョンとかも流行って、周りでもHIPHOPの話をする奴が増えて…ってタイミングだったんです。
それでまあ聴いてみるか思ってLil Peepを聴いたら…「あ、超NIRVANAじゃん、これもHIPHOPって呼んで良いんだ」って衝撃があって。
KOHHも聴いてみたら"It G Ma"で自分の好きなブルーハーツを引用してて、そういう自分の好きなものを引用してくるところに喰らいました。






─HIPHOPのどういう部分に惹かれたのでしょうか。

ued:
やっぱ「俺、凄いっしょ」みたいなとこですかね。
自分はロック好きですけど、ロックってそういうのないじゃないですか。
どっちかって言うと「なんて俺はダメなんだろう」みたいな感じで、うじうじしなきゃダメみたいなのがある。
でもHIPHOPなら…自分もそこまでボースティング出来る人間じゃないんですけど、こういうボースティングしても良いんだって思った。

あとはやっぱり引用とかは個人的に刺さりましたね。
ロックはバンドなので、4人編成なら4人分のエッセンスを抽出する訳ですけど、HIPHOPならラッパーが自分の気持ちを100%ビートに載せられる。
そこが面白いなと思いました。
そういう衝撃と、ジギジギボーイズの中での方向性の違いみたいなのが出てきたので、バンドは辞めた感じですね。


 聴いていくうちに「自分の方が面白い言葉を吐けるんじゃないか」って思いが出てきた


─特に影響を受けた・好きなアーティストなどはいますか?

ued:
原体験としてNIRVANA、銀杏BOYZ、ブルーハーツは確実にありますね。
ラッパーだとEarl SweatshirtとJPEG MAFIAは今回のアルバム制作中にかなり聴いてました。

日本だとMinchanbaby, dodo, YDIZZY…あと元TENG GANG STARRのkamuiさんは滅茶苦茶個性があって好きです。
新しいシングル"TESLA X"もですし、『MUDOLLY RANGERS』や『I am Special』とかも最高です。



kamuiさんからはラップの影響をかなり受けてると思いますね。
なんか、kamuiさんて首に「DATURA」ってタトゥーが入ってるんですけど、それって村上龍の小説からの引用で。
自分も村上龍めっちゃ好きなんで、そういう文学的な素養もあって、それをHIPHOPに引用して来ても良いんだっていう気付きがありました。

あとは日本のパンクバンドだとINU…町田町蔵が凄い好きですし、ノイズだとやっぱりThrobbing Gristleですね、ノイズは凄く詳しい訳じゃないんですけど。


─Earl、ミンちゃん、スログリ…かなり音作りにおいて一癖あるアーティストが揃ってますね。

ued:
そうですね、普通の人が作ってる普通の音楽にはあんまり興味がないです。
ジャンルを問わず変わった動きをしてる人が好きですね。
ちょっと変な、シーンにおけるアウトサイダーみたいな匂いのする人が良いです。


─上記のアーティストが自身の楽曲に影響を与えている部分はありますか?
 特にビートにはHIPHOP外からの影響を非常に色濃く感じます。

ued:
そうですね、特にビートにおいてはトラップだったりオーセンティックなものだったり、今あるジャンルに当てはまる音の上ではやりたくないです。
それもあって最初のEPの頃はType Beatだったんですけど、「やっぱ誰かやってんなあ」って感じは否めなくて。

本格的に活動を始めたのが2020年2月なんですけど。
そこから2月の1st EP『im』、3月の2nd EP『GROTESQUE NEW POP』はType Beatでした。
5月の3rd EP『WOEUED』は友達のトラックメーカーにトラックを作ってもらいましたけど。
録音もiPhoneのマイクで直録りして笑



7月の4th EP『outsider』からPCを買って、自分でビートを作るようになりました。
だからちゃんとビートを自分で作るようになってからまだ3か月とかですね…前からちょこちょこiPhoneのガレバンで試しに作ったりはしてましたけど。




─なるほど…あのEP連続リリースの裏にはそんな背景があったんですね。
 時系列が前後しますが、バンドを辞めてからEPを出すまでの経緯はどういったものだったんでしょうか。

ued:
バンドを辞める直前くらいになると、「やっぱHIPHOPの方がカッコ良いな」って思い始めて、
バンドやってるんだけど聴いてるのはHIPHOPって感じになってきたんですよ。
ちょっとバンドのままHIPHOPをやるってことも考えたんですけど、でも、バンドに属している人がソロでやるHIPHOPって大体ダサいんですよ笑
俺はそういうしょうもないのになるのは嫌だから、下手にHIPHOPに手を出すのはやめとこうと思ってたんですけど、でもバンドの方向性ともズレてきたので辞めて。

ただ、バンドを辞めてからもまだ「HIPHOPをやろう」ってことにはならなかった。
なぜなら自分はHIPHOPをやって良い人間じゃないんだ、みたいな思いがあって。
それでノイズをやってみたんですけど上手く作れなくて…それで「なんなら俺は音楽自体やって良い人間じゃないのかも」って思い詰めるくらい落ち込みました。

でもその時に本とかを読んだら、なんかスルッと入ってきたんですよね……小説って、言葉じゃないですか。
それで、「もしかすると俺はノイズみたいな音を作るのには向いてなくても、言葉を音に乗せることは出来るんじゃないか」と思って、マインドの置き方がグッと変わったんです。
で、その音に自分の言いたい言葉を乗せるっていうのがHIPHOPだと思ったので始めました。
だから自分のHIPHOPは、まず言葉があったって感じですね。


─先に言葉があったから、ビートはまずType Beatで始めた?

ued:
そうですね、まずは言葉を出したかった。
HIPHOPもロックもですけど、聴いていくうちに「自分の方が面白い言葉を吐けるんじゃないか」っていう思いが出てきたんですよ。
最近のトラップとか、skrr skrr言ってビッチがどう、仲間家族がどう、みたいな歌詞が多いじゃないですか。
別にそれを歌いたい人たちはそれで良いと思うんですけど、自分ならそれとは違うものが出せる、と思いました。

だからボースティングひとつにしても俺の方が面白いやり方出来るぞ、(“Cartman”のリリックにあるように)池田大作なんてワード出して踏めるか?みたいな笑
別に学会員って訳ではないんですけど。


 HIPHOPをやろうと思った時に、キミドリに始まり最近のトラップに至るまで、大体全部聴いた


─なるほど、HIPHOP的なボースティングについてはかなり自覚的にやってるんですね。
 その音楽性や経歴などからするとやや意外に思ったのが、他ジャンルからシフトしてきたけど、日本のHIPHOP作品のリリックの引用があったり、韻を非常に重要視していたり、ラップスタイルとして日本のHIPHOPのベースを非常に大事にされている気がします。
 このあたりの意識を教えて頂けますか?

ued:
まず、自分の意識としては「ピュアにHIPHOPな作品を作ってる」という意識でいます。
そうなったときに、やっぱり守るべきマナーってあるじゃないですか。
それこそブルーハーツが言っていたように「ルールはないけどマナーは守れ」っていう話だと思っていて。
だからそこは超大事にしていますし…音楽的にもそうじゃないと面白くないと思うんです。

つまり、ただ突飛な感じでノイズにラップを乗せたものを出したって面白くない。
これまでの日本のHIPHOPの文脈の延長線上にあって、でも一歩踏み出している、そんな異物感が欲しい。
自分が「これはHIPHOPです」と言って出す以上、ちゃんとそのベースを押さえた上で出すことは意識しています。

過去の日本のHIPHOPを引用している点については…自分のトラックってサンプリングはほぼ使わず打ち込みなんですけど。
音をサンプルしない代わりに過去の作品のパンチライン言葉を引用する、という意識はあります。

だから、(音楽経歴はバンドから始まったとは言え)「自分は日本のHIPHOPを作っている」というアティチュードを持てるものにしています。


─しかも引用がMSCだったりNENEだったりItaqだったり、日本のHIPHOPでも割と広範囲な押さえ方をしているのが伺える内容になっていますね。

ued:
そうですね、日本のHIPHOPについては結構幅広く聴いている自覚はあります。
自分でHIPHOPをやろうと思った時に、キミドリに始まり最近のトラップに至るまで、大体全部聴いたんですよ。
その中でもMSCやBuddha Brand、ゆるふわギャングも喰らったし、さっき上げたkamuiとかのアーティストはもちろんだし…日本のHIPHOPって面白いと思って。
やっぱり言葉を意識しているので、その中で彼らが吐いたパンチラインとかは覚えてます。

ちなみに自分が「まるで」「like a」を意識的に使ってるのはブッダの影響が大きいですね。
「小学生のPuxxy」とか、ああいうパンチラインと俺の「池田大作」のラインを戦わせてる感じです笑


─きちんと日本のHIPHOPの文脈やマナーを押さえた上で、アウトサイドから一撃を入れるポジションだと。

ued:
自分は北野武の映画が結構好きなんですよ。
ビートたけしって、北野武として映画業界に入ってきた外様じゃないですか。
以前、「俺の映画は、映画産業の端っこにポツンとあるものなんだ」っていう話をしていて、それは自分に通じると思ってますね。
俺もHIPHOPの端っこにポツンとある異物でありたい。
でもHIPHOPの世界の内側なんだからそこのマナーは守る、その上でHIPHOPの真ん中からは外れた場所でのトップになりたい、という感じです。

HIPHOPをするけどアウトサイダーだし、他人と同じことはしない。
同じことをやってるラッパーも多すぎるので、俺が全然違うことをかましてやるよ、っていう思いはありますね。


 2020年にThrobbing Gristleの名作をもじって『2020 Jazz Funk Greats』というタイトルのアルバムを出したかった


─ではここから最新作『2020 Jazz Funk Greats』について教えて下さい。
 まずアルバムタイトルから各曲名まで、全て明確な引用元が存在します。
 この辺りの狙いを教えて頂けますか?



ued: 
自分が曲を聴いてるときに喰らうのは固有名詞なんですよ。
(KOHHの”It G Ma”然り)「あ、この人もこれ聴いてるんだ」みたいな。
なので、だったら固有名詞を前面に出してやろうというのがこの理由ですね。
自分と同じように喰らう誰かに届けば良いなと。
個人的には同じ歌詞でも、「近くのコンビニに行って」よりは「近くのセブンに行って」の方が面白みを感じる人間なんですよ。
そういう「この人もこれを知ってるんだ」「この人もこれやってるんだ」みたいな響きを生みたくて、音楽に限定しない固有名詞を曲名に引用しています。

あとはもちろんさっき話した通り、自分はビートでサンプルしないぶん、歌詞で引用する、という姿勢も影響しています。


─また、uedさんは本作を2020年のサントラだと位置づけていますね。

ued:
そうですね、この位置付けには2つの側面があって。
ひとつ目に、自分が2020年に喰らったものリストを並べた、というパーソナルな側面があります。
これが固有名詞だったりの部分ですね。
ふたつ目に、一方でビートは世相を反映して、「これは暗かった2020年ぽいな」というものをチョイスして来ています。
だからパーソナルな2020年と、なんか陰鬱だった世間の2020年を掛け合わせた意味でのサントラです。

あとは単純に、2020年に(Throbbing Gristleの名作をもじって)『2020 Jazz Funk Greats』というタイトルのアルバムを出したい、という思いもありました笑




─これまでの話を聞いていると、曲作りの方法として、まずタイトルを決めて、そこからリリックやビートを膨らませるような手法を取っているのでしょうか。


ued:
そうですね…自分が小説や映画から受けた・得た知識や経験・印象がまずインスピレーションになってます。
そこからは順不同ですけど、曲名をまず付けたりとか、「この映画に欲しいBGMを作ろう」と思ってビートから始めたりとか。
自分が喰らったものを、自分というフィルターに通して出す、というのが曲作りの出発点ですね。

でもまあやっぱり曲名から始めることが多いかもです。
それこそ(リードMVにもなった)“Eraserhead”とかは、原案になる映画を見て、「じゃあ”Eraserhead”って曲を作ろう」ってところからスタートしてます。


─ビートについては先ほども話に出た通り、本作も全てGaragebandですか?

ued:
そうです、全てガレバンとMIDIで作ってます。
サンプリングもさっき言った通り基本的にしないで打ち込みですね…なんか狙って(サンプリング)しようとすると自分は絶対に失敗するんですよ。
だから全部自分で弾いて打ち込んで、あとはグリッチノイズのパッケージを買ってきてそれでノイズを入れたりとかですね。
ラップはHIPHOPマナーを凄く重要視してますけど、逆にビートは普通のHIPHOPの人からすると変わってるかもしれません。


─ソフトがないからGaragebandを仕方なく使っているというより、スタイルとしてその方法ということ?

ued:
高いソフトに興味があったときもあったんですけど、今はいいかなって。
これで全部出来てますしね。
(カナダのシンガーの)Grimesも『Visions』(2012年)をガレバンで作って世界に知られましたし、電気グルーヴもガレバンで『TROPICAL LOVE』(2017年)を作ってる。



多分才能がある奴というか、自分がこうしたい、こうありたいっていう姿をしっかり持ってる奴はソフトの種類とか別に関係ないんですよ。
俺もそうです。

でもまあ、くっそ売れたらスタジオ建てますけどね笑
そのスタジオの中であえてガレバンを使うことだって全然あり得ると思います。

あとは(ビートメイクにあたって)ローファイ感というか、ベッドルーム感が損なわれないように、というのは意識しています。
金掛けてんなーっていうものよりは、自分の好みがそういうものなので。
やっぱガレージ感みたいなところがアティチュードとして好きですね。


─サウンド面についても教えて下さい。
 ラップとビート、あえて同じサウンドレベルでミックスしていますか?
 それによってマンブルなラップと、主張の激しいビートが渾然一体となっている感じが非常にあります。

ued:
ミックスもマスタリングも、単純にまだ良く分かってないんですよ笑
だから純粋に自分にとって耳馴染みの良いバランスにしてるんですけど、昔のパンクとかもボーカルの音ってちっちゃいんですよ。
なので、そこに影響を受けてそういうサウンドになってるのかもしれません。
だから変な感じのミックスだろうとは思いますね。
ただ「この曲はボーカルをあえて下げて…」みたいなことを意識的にやろうとすると毎回失敗するので、あくまで無意識に、自分の耳にとって気持ち良くなるまで何度も何度も調整する、というやり方の結果です。

だからあくまで自分の聴きたい音楽を作るとこうなる、という感じですね。


 別に「俺はお前らより賢い、分かってる」みたいに高尚ぶるつもりは全くないけど…


─アルバムのリード曲である"Eraserhead"について教えて下さい。
 この曲は4小節ごとに入るSEも刺激的ですし、リリックとしてもセルフボーストの仕方が新しいですよね。
 ゴリゴリに煽り倒してるけど、実は自分自身はベッドから起き上がりもせず頭も体もがらんどう、でもだから最強なんだ、という。



ued:
これは曲を作る前からHOOKのイメージがあの音程で頭の中にあって、それに上手く組み合わせれるかな、とシンセをバーッと弾いて作りました。
この曲の…特に歌詞はEarl Sweatshirtの影響が大きいですね…彼も結構そういう煽り方をするんですよ。
で、内容としては…別に良いんすけど、最近のHIPHOPを聴いて(歌詞の内容として)何も面白いことを言ってないなと思っていて。
自分は絶対に面白いことを言ってやろうという意識は凄くありました。
ここでの面白さの意味も、楽しいものというよりは、知的好奇心的な、Interestingなものがないなって。
だからそういう意味で面白いことがやりたくて作った曲です。
冒頭で「俺はルールブック持たない skrr skrrも言わない」っていうのは、自分はトラックの作り方も分かんないし、今のHIPHOPで流行ってることも分かんない。でも俺の方が…っていうところからセルフボーストする歌詞の書き方になっています。

その意味で自分の姿勢が凄く出た曲だし、出来たときに「これは凄いぞ」っていう手応えがありました。
だからYoutubeのMVがまだまだ伸びてないのは全然納得いってないです、1万、2万は伸びる価値あるだろと思ってます。


─"Lexicon Devil"ではミックスバランスをあえて他曲より更に崩してビートとラップが拮抗するバランスが歪んだ魅力を放ちます。

ued:
この曲名はGermsっていうLAのパンクバンドが出した『Lexicon Devil』(1978年)から取ってます。
自分は腕にGermsのマークのタトゥーを入れるくらい好きで、その名前を冠する以上気合を入れて作った曲ですね。

あとミックスの話で言えば、この曲は完全に狙って成功した珍しい例です。
さっきも言った通り、INUとかってボーカルが演奏に対して小さいんです。
あとはThrobbing Gristleも音に対して声がディレイするような聴かせ方をしてたりとか…ジョン・レノンの声も2本のマイクの真ん中に立ってボーカルしたり、そこに更にエフェクトを掛けることで空間的に包まれてるような感覚を生んでるんですけど。
そういう…感覚的に円形に包まれてるようなサウンドを目指したかった。
だからGermsのマーク(青い円)であるCircle oneが歌詞にも出てくるのもそういうことですね。

2verse目で歌ってる「くだらねえ奴らが多すぎるからまた騙されるmedia blitz」ってラインの「media blitz」もGermsの曲から取ってます。
だからこの曲はセルフボーストを、自分の好きなサイケやノイズの要素を散りばめながらギュッとHIPHOPに濃縮した、そんな曲ですね。


─この曲ではItaqさんへの言及も出てきますね。

ued:
この次の”Cartman”で「池田大作」ってワードを出して、こんなこと誰もやってないだろって思ってたら、Itaqさんを知って…宗教を押し出すラッパーで、そんなことやってる人いるんだって思って。
それで曲を聴いてみたら、やっぱ彼も人と被らないことをしてるじゃないですか。
そういう、誰もやったことない、被らないことをやってる存在としてパンクだなと思って、個人的にフィールしたので名前を出させて頂きました。
だからラップスタア誕生でいま爆発してて良かったーって、他人事ながら思いました。



─"Cartman"では「知識」をテーマに自己探求的なリリックが紡がれます。
 『outsider』のジャケットも岩波文庫の青本オマージュでしたが、他のアーティストの知識観について思うところがある?

ued:
めちゃくちゃありますね。
別に「俺はお前らより賢い、分かってる」みたいに高尚ぶるつもりは全くないんですけど。
自分もそういう奴嫌いなんで。
でもだからと言って…流石にHIPHOPの人はHIPHOP以外聴かない、ロックの人はロックしか聴かない、音楽の人は音楽しか聴かない、っていうのはやめといた方が良いと思っていて。
その結果っていうか、ビッチがどうとかskrr skrrとか、意味のないことをみんな言い過ぎだと思います。
さっきも言った通り、自分はInterestingな意味で面白いことが好きで、映画も小説も、そして音楽も、知的好奇心が刺激されることに喰らうので。

だから、俺の思う「面白い」っていうのはこういうことだよ、出来ないでしょ?っていう、そういうボーストですね。
意味あることが出来る人はあえて意味ないスタイルにも振れるけど、意味ないことしか出来ない人が意味あることをするのは不可能なので。
だからアーティストと名乗るなら、みんなもっと本とか読むべきだと思います。
そうでないと言葉を扱う資格がないし、言葉に真摯に向き合うことこそが、アーティストがアートに対してあるべき姿勢だと思う。

ちなみにこの曲名のCartmanはサウスパークのキャラクターなんですけど、めっちゃ頭が良いけど滅茶苦茶やるサイコパスなんですよ。
そういう立ち回りをここでは僕が演じている、っていう曲です。

だからこの曲は、言葉に対して向き合わずに、素養を高めようとする気もない人はもう辞めた方が良いんじゃない?っていう内容ですね。


─HIPHOPの「言葉」の練度を高めた曲が少な過ぎるんじゃない?と。

ued:
はい。
別にビッチがどうみたいな曲も全然あって良いんですけど、もっとラップの詩として面白い、読み物として面白いものも欲しいです。

自分はそのレベルで面白い詩を書いている自負があるし…かつ、そのクオリティの物をこのリリースペースで出し続けてるぞ、っていう。
やっぱり詩のクオリティも高くて、曲もイケてて、ビートも自分で作ってる。
それがこのペースで出てくる、それこそがカッコ良いだろ、と思っています。

…という自負でやっているので、この曲を聴いて何も感じない奴はもういいです笑
俺の曲は向いてないので、大人しく帰ってskrr skrr言ってる曲を聴いといて下さいって感じですね笑

だからこの話で言っても、やっぱkamuiさんは凄いと思うんです。
朝日新聞で連載してた「ラッパーたちの読書メソッド」ってコーナーがあるんですけど、その中でkamuiさんはドストエフスキーとかサルトルとかの名前がどんどん出てくる。

その意味でもやっぱりアーティストとしての素養を高めてる人なんだろうなと思います。
自分も『outsider』のジャケットは岩波文庫の青本から、ニーチェ『この人を見よ』をオマージュしてるし、だからこのEPの中に”Ecce Homo”っていう、『この人を見よ』の原語を冠した曲が入ってたりします。
まだ誰にも指摘されたことないんですけど笑

ただまあ大事なのは、別にこういう部分をもって高尚ぶりたくはないってことです。
そういう頭でっかちな奴が一番パンクじゃないし、そう思われたくないのでそこのバランスは気を付けてますね。



─HIPHOPとしてのマナーを踏襲しているからこそ、"Space Oddity"や"Boyz"が良い意味でHIPHOPから外れた、特異な存在感を放ってますね。

ued:
この2曲は僕なりのSkitですね。
HIPHOPのアルバムってSkitがあるじゃないですか…でも自分が喋ってるだけのものを入れても仕方ないので、あえてHIPHOPではない曲調のものにしました。

“Space Oddity”は80年代のNew Waveとテクノの混ざった感じ…例えば、(精神病院の患者と看護人で結成された豪バンドの)SPKのディスコアルバムとか、Kraftwerk的なGerman New Waveに近いことをやろうという意識で作りました。

“Boyz”の方は、それこそEmo Rapぽいアコギの感じを出しつつ、アシッドフォークのちょっと狂った感じも混ぜて、みたいな音ですね。

歌詞については、”Space Oddity”がDavid Bowieの同名曲から取ってるんですけど。
その曲が火星に行く曲なんですけど、自分の方では代わりに月に行って、人と人の別れを描いています。
だから重めの内容なんですけど、それをあえて(80年代ディスコ的な)軽い感じの音に乗せてやろう、という意識で作りました。

“Boyz”の歌詞は、ジギジギボーイズに所属してた時の気持ちを表してますね。
ライブハウスのドアを開けて、全員ぶっ殺すつもりでライブしてた頃の青い思い出を「ああいうこともやって良かったなー」っていう。
ちなみに最後にうっすらと「ピュー」っていう、飛び立つようなSEを入れていて、この飛び立つ感じが次の”Guru”に繋がります。
Guruは教祖って意味もあるので、神に会いに飛び立つっていう…その意味でSkitらしく繋ぎの役目も持たせてます。


─アルバムの構成として、かなり練り込んでありますね。

ued:
そうですね。
だからHIPHOPのアルバムの中にあえて違うアティチュードの曲を入れて、それがHIPHOPの曲たちの繋ぎになる役割です。

でも、普通アルバムを作るとなったら、曲と曲の流れを考えて、その流れにも意味を持たせるじゃないですか。
だからアーティストが「アルバムを出す」って言うなら、それくらい「アルバム」っていうフォーマットに真摯に向き合うべきだと思います。

その意味ではAwichさんとかほんと凄いなと思います。
インタビューで以前、アルバムの流れを大事にしてるって話をしてて…だからAwichとかkzmとかの作品は、頭からラストまで聴くとちゃんと読後感みたいなのがあるんですよ。
素晴らしいなと思って聴いています。
そういう人たちと同じだと言える水準まで持って行きたいと思っています。


─最後に、今後の予定を教えて下さい。

ued:
まずはぼちぼちライブのお誘いを頂くようになっているのでそれをこなします。
あとは客演の誘いとかないかなーと思ってるんですけど、それを待ちながら、次のEPを作ることを考えようかなって。


─もうEPを作るんですか?凄いスピードですね。

ued:
まあ、今年既にEP4枚とアルバムを出したのでやり過ぎかなとも思ったんですけど、でも止まったらそれで終わっちゃうんで、動き出せなくなる気がするなと。
その為にも、まずはまた新しい芸術を見て、本を読んで、自分自身を高める期間が必要だなと思ってます。
このインプットはアーティストとしてマストだと思ってるので。

でもまあ、EPもですけど客演がやりたいですね。
今回は相当良いアルバムを作れた自負があるし、これまでは自分のビートに乗ってたから好きにやれてましたけど、他人の曲で他人のビートに乗る中でヤバいのをカマすぞっていう状態にもなってるんで。
絶対にカマしたい曲がある人は僕に連絡下さい、ヤバいのを蹴ります。


─自分の曲にどす黒い異物感が欲しいアーティストの方、ぜひご連絡下さい。ありがとうございました。


以上 (2020/11/01)
───

ued 『2020 Jazz Funk Greats』

01. Intro -2020 Jazz Funk Greats-(Prod.by ued)
02. Eraserhead(Prod.by ued)
03. Lexicon Devil(Prod.by ued)
04. Cartman(Prod.by ued)
05. Gasper Noe(Prod.by ued)
06. Howl(Prod.by camdenpzi)
07. Space Oddity(Prod.by ued)
08. Naked Lunch(Prod.by ued)
09. Boyz(Prod.by ued)
10. Guru(Prod.by ued)
11. Ocean(Prod.by ued)
12. Ubermensch(Prod.by camdenpzi)


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