Column/Interview

福岡出身のMC・NF Zessho。常に走り続け、質の高い作品を届ける彼に対し、日本のHIPHOPはようやくそれに見合う対価を示し始めた。しかしまだまだ足りない。

「『CURE』を出して以降は仕事してないんですけど、別に良い車買えるほどには儲かってないんですよ。そんな状態だからこそ、なんで俺がファーストクラスに乗れねえんだよ、なんで稼ぎまくれてねえんだよみたいな思いはある」


登場する主なアーティスト(順不同):
D-SETO、Aru-2、ISSUGI、仙人掌、Jinmenusagi、Ace Cool、Shing02、
スチャダラパー、サトウユウヤ、Chico Carlito、Shintaro Kunieda、Yoshinuma



自身のキャリアの転機について


─今回は最新作『RYNO』と今後の動きを中心としてお話を伺いたいと思いますが、まずはこれまでのキャリアの流れを整理させて下さい。
 NF Zesshoさんはネットで2011年頃からフリーミクステを中心に発表して以降、一貫して多作家ですが、それらの中でもこの作品で特に大きく変わった、みたいな作品はありますか?
 
NF Zessho:
アーティストとしての自分自身については、毎作品レベルアップしてる実感がありますね。
例えば1st『Natural Freaks』(2013年)から2nd『Beyond the Moon Shine』(2015年)になったときは歌も交えるってスキルが身に付きました。
その次はエンジニアリングも出来るようになりましたし、自分自身のスキルは毎度上がってる実感を持っています。
一方で周りからの反応が大きく変わったのは3rd『CURE』(2018年)ですね。


─それはどんな理由からだと思われますか?
 
NF Zessho:
CUREまでの2作は自主レーベルで出してたんですよ。
その時はアルバム発売まで毎週1曲をフリーDLで出す、みたいなプロモーションをやったり。
要は大きい会社が付いてないからこそ出来ることをしてたんですけど、『Beyond the Moon Shine』を出したあたりからやりつくした感もあって。
それで次にどうしようってなってた時に、Pitch Odd Mansionの國枝真太朗さんがManhattan Recordingsと繋いでくれました。
そこできちんとバックが付いて、メディアへの露出が増えたことでかなり変わったなと思います。
もちろん客演も間違いない人たちが参加してくれましたしね。
 
『CURE』以降はまた自主でEPを出したりしても毎回デカい反応が返ってくるようになりました。
作品の質自体は別に『CURE』前後で変わってないと思うんですけど、露出が増えたことで一気に届いたって感じですね。
その意味ではやっぱりあのアルバムが転換点だったのかなと思います。
 

─『CURE』の頃は、自分は社会で最底辺だから、社会に無理やり適応するより音楽で突き進むと話していました。
 アーティストとしてのモチベーションになっているのは、その時々の自分自身や社会との戦い、葛藤で、それが作品に投影されてる感じでしょうか。
 
NF Zessho:
そうした思いが自分の中にあることは事実なので、リリックの端々にそれが出てるっていうのはあります。
ただそうした葛藤みたいなもの描くこと自体を自分のスタンスとしている訳ではなく、あくまで音としてカッコ良いラップをするのが大事ですね。
 

─音としてのカッコ良さに重点を置きつつも、一方でかなり作品ごとのテーマ設定はシビアにやっている印象です。
 
NF Zessho:
作品ごとの設定を明確に決め始めたのも『CURE』からですね。
この作品は、最初ソロでやってるSide B(アルバムの2~9曲目まで)だけで、EPサイズで出したかったんです。
ただレーベルとかから「名前がないからソロだけだと売れない。客演を入れないと」って言われちゃって。
でも自分としてはこのソロの8曲でもう完結してるので嫌だったんですよね。
それでどうするか考えた時に、ある同じ状況を、自分一人でいるソロのSide Bと、周りの人たちと過ごしているSide Aでミラーリングして描くってアイデアを思い付きました。
これがいざ作ってみると作品の強度が半端なかった。
 
自分の中では綺麗にストーリー性が纏まってるものの方が作品としての強度が高いと思ってて。
例えばJinmenusagi『LXVE』(2014年)、仙人掌『Be in One’s Element』(2013年)、Ace Cool 『GUNJO』(2020年)とかがそうなんですけど。
『CURE』でSide A, Bを作る中で、自分でもそういう表現ができるくらいスキルアップしてることに気づいたんですよね。
それからはかなり考えるようになりました。


『RYNO』の立ち位置は?


─その意味で言うと、最新作『RYNO』はどんな位置付けになるんでしょう。
 
NF Zessho:
『RYNO』に関しては、ライブに来てくれるリスナーとかと盛り上がれることをコンセプトに作りました。
この作品の収録曲は実は2-3年前から作ってて、ライブではやってた曲とかが多いんですよ。
 
自分は元々ライブは自分を表現する為のものだと考えてたし、自分の作品だって意識が強かった。
でも最近はブッキングもどんどん増えてきたし、ライブに行けば人がそれなりに遊びにきてくれて、そこそこ盛り上がってくれる。
だから少し「周りの存在」みたいなのを意識するようになってきたんですよね。
そんな時に、USのラッパーの…ちょっと誰だったか忘れちゃったんですけど、その人がインタビューで「自分はライブでみんなで歌えて盛り上がれる曲が作りたい」って話してたんですよ。
 
自分は元々Boombapが強い福岡出身なのもあって、「人の為にやってるんじゃねえ、自分の為だ」みたいな、自分でHIPHOP右翼と呼んでる保守的な立ち位置にいるんですが笑、
そうした最近のことや、今の自分の状況やマインドも踏まえると、別に自分のことだけじゃなくファンの人たちに喜んで貰う為の作品がひとつあったって良いじゃん、って思った。
それでライブでやってた中で音源化されてない曲を纏めていったら『RYNO』になったって感じですね。
元々ライブでは自分の曲のVerseをビートジャックというか、別の曲のインストに乗せて披露してたりしてたんですけど、そういう名残もあってRYNOは大ネタ使いの曲も多かったりします。
 

─これはNF Zesshoさん式のパーティーアルバムだと。そうした曲を集めた結果、タイトルが『RYNO』になった由来は?
 
NF Zessho:
PS2とかで出てるラチェット&クランチってゲームシリーズがあるんですけど、その中のいわゆる隠しアイテム的な最強武器の名前がRYNOなんですよね。
なのでこのEP聴いてバンギンしとけ、この曲たちが最強だぜみたいな感じで名付けました。


─過去曲の中からピックアップした一方、当然レコーディングは現在のスキルで録っている訳ですが、今作でラップスタイルなどで意識した点はありますか?
 
NF Zessho:
特段バンギンな曲を集めたからラップスタイルを変えようという思いはなく、純粋に今の自分のラップスキルで録るとこうなったってところですね。
今の自分の中でエッジの効いてる、スピットした感じのスタイルがカッコ良いっていうのが今のテンションなので、結果的にそうしたスタイルがかなり出てる作品になってるかもしれません。
逆にAru-2と出した『AKIRA』(2019年)とかは、普段から超仲良いんで気楽に作りましたし、その結果もう少し違って柔らかいラップスタイルに聴こえるかもです。


─『RYNO』の曲をこれまでライブだけで正式に音源化していなかった理由は?
 
NF Zessho:
“Vibin”と”Supreme Playa”については元々『Main Plot』(2019年)に入れてたんですよ。
この作品はCD-Rの手売り限定っていう、『CURE』でオーバーな動きをやったからその後にあえて保守的な動きをやりたいなと思った時期に作ったんですけど、結局サブスクとかで広く出さないと皆聴かないなと思って。
自分でもそうですし。
で、この2曲についてはライブでもよくやるし、まずは入れようかなと思った感じです。
“S.O.F(original)”と”Overcoat Freestyle”については元々『Cheap Trick』って作品に入ってて、それは福岡にあるDARAHA BEATSってレコ屋があるんですけど、そこで買い物した人への特典CD-Rとして渡してたんですよ。
その時はビートジャックでやってたんですけど、そのあと自分でREMIXしたりしてライブで披露してました。
あとは”Go Fuck Yourself”はフリーDLで配布したやつです。
最後の”Diegos”は完全にExclusiveで、初めて世に出した曲ですね。
 
なので『RYNO』についてはこれまで一度出してるのが大半なんで、あんまり気張らずに、Soundcloudに上げる延長くらいの感じで作品にした感じです。
 

─そんな中で今回は”S.O.F(original)”をPRKS9でのMV化にチョイスしたと。この曲名の由来は?
 
NF Zessho:
S.O.FはSpirit of Fireの略で、シャーマンキングってマンガがあるんですけど、そこの最強キャラのハオってキャラが使う精霊の名前です。
思えば”Diegos”もジョジョの奇妙な冒険7部のディエゴ・ブランドーから取ってますし、なんか改めて見ると中二病全開すね笑
 

─RYNOもS.O.FもDiegosも、全部俺が最強だぜって言ってる、みたいな笑
 
NF Zessho:
まあリリックを書くときに、先に題材をセットしてそこからフレックスして書くからかもしれないです。
“Diegos”だったらそれこそ(ジョジョ7部のストーリーである)レースに見立ててライムを書いていきました。
 
自分の中で曲を作るときに2つ選択肢があって。
カッコ良さを伝える曲なのか、何かを伝えたくて書く曲なのかっていう。
“S.O.F(original)”や”Diegos”の場合はゴリゴリに前者だったって感じです。


NF Zesshoの考えるライミング


─それを踏まえて、”S.O.F(original)”はどういう位置付けの曲になりますか?
 
NF Zessho:
最近、自分の中でライムの定義というか歌詞の好みが変わってきたんですよ。
良いライムの観点って色々あると思うのですが、
自分としては直接何かを主張するのではなく、状況説明だけでフレックスしたり何かを伝えるようなタイプのリリックが好きだなって割と最近気づいて。

その中で”S.O.F(original)”自体は2017年とかに作ったんですけど、なんか今の俺が思う基準に達してるんですよね。
あとこれは余談なんですけどウィルさん(Pitch Odd MansionのSweet William)がこの曲を好いてくれてるっぽくて、定期的にこの曲のことを褒めてくれたりとか。
俺としてはリスペクトしてる人からそういう風に言ってもらえると嬉しいし、
あとはまあ普通にライムの基準も達してるし、曲として自分でも気に入ってたので今回入れたって感じですね。
 
ライムの話に戻ると、恐らく、韻にダブルミーニングがあるとか、全然関係ない韻の羅列に見えても実は話として全部一つに繋がってるみたいな、
そういう強度が高いライミングってUSのラップゲームだと当たり前にやってる人がほとんどだと思ってるんですけど、
日本だとごく一部しかいない気がするんですよね、まあ自分が知らないだけなのかもしんないですけど…。
そういうタイプのラップだとユウヤさん(サトウユウヤ)とかISSUGI氏のラップが特に好きです。
 
特に自分的にある種の完成形だと思ってるのは『400』の頃のSHING02とか『Wild Fancy Alliance』の時のスチャダラパーで、
日本語のリリックっていう意味でめちゃくちゃリスペクトしてます。
特にSHING02に関しては歌詞だけ読んで一人で唸ったりしてますね笑
 
そういえばこないだユウヤさん(サトウユウヤ)に教えて貰ったんですけど、SHING02の”旋毛風”(『400』収録)って、
一見何言ってんのかよくわからない曲なんですけど、
よくよく聞くとこれ多分Shing02が江戸時代にタイムスリップするっていう設定の話なんですよね。
レコードのことを「恐ろしく丸い鉄煎餅」、ミキサーのことを「虹を漆に閉じ込めた」ってそこにいる村人からの視点で表現してたりとか。
リリースされてから何年も経ってるのに今でも新しい発見があるのは本当に凄いことだと思います。
 
その中でも自分が一番好きなShing02の曲は”S02-2102″(同上)で、サイバーパンク的な世界観の言い回しだけで曲が進んでいくんですけど、
解読すると1ヴァース目は「もうすぐ飛行機に乗るのに電源ケーブルを忘れたから急いで取りに戻った」、2ヴァース目は「お母さんから宅急便でらっきょうが届いた」ってだけの話で。
この曲が自分の一番書きたいタイプの曲というか、自分の中の理想に最も近い曲です。
 
スチャダラパーも同じくで、時代に合わせてポップにやってるんですけど、バランス感とか切り口が絶妙だと思います。
 
普通のラッパーは地元の先輩やクラブに出入りしてるOGとかのスタイルに影響を受けると思うし、そっちの方が正統派だと思うのですが、
自分の場合はそれよりインターネットで調べて出会った音楽に影響された部分が大きいですね。
まぁでもかと言ってそれだけという感じでもなく、頻繁では無いにしろ遊びにだったりライブしに行くことはあったので、
福岡・親不孝通りのHIPHOPが持つカッコ良さにリスペクトしてますし、自分なりに継承しつつやってるつもりです。


─”S.O.F(original)”をMV化しようとなった経緯は?
 
NF Zessho:
シンタロウさん(Shintaro Kunieda)からの提案ですね。
以前MV化した”Paraside”のときもなんですけど、シンタロウさんから「これでMV撮りたい」って連絡あったので、是非お願いしますと。
で、”S.O.F”自体は以前のバージョンでMVも既にあるんですよ。

 
前のはビートジャックものだしMVのクオリティも自前で撮ったやつですが、あえて今の映像・ラップのクオリティでやり直すのも面白いかなって。
 
MVのディレクションは全部シンタロウさんに任せてます。
基本的にMVは監督の作品だし、途中で意見言ったりはしながらもお任せしてますね。
自分で以前のバージョンを撮ったときはこの曲を聴いて「病院でロケしよう」って発想は出てこないですし、この辺はシンタロウさんの作家性だからこそだなって思います。


音楽一本の生活になってからの葛藤


─”Supreme Playa”について教えて下さい。この曲はとりわけリリックが印象的な気がします。
 「もう少しで物乞い」「この人生はただただ悲しい」と歌いつつ、「俺以外にDOPEな奴がいんなら連れてこい」とも吠える。
 非常にハングリーさが出てる印象なんですが、そういう背景があるんですか?
 
NF Zessho:
確かにあるかもしれませんね。この曲を作ったのは『CURE』出したあとで、2年前くらいなのでちょっとうろ覚えな部分もあるんですけど。
俺、『CURE』を出して以降は仕事してないんですけど、別に良い車買えるほどには儲かってないんですよ。
で、そんな状態だからこそ、なんで俺がファーストクラスに乗れねえんだよ、なんで稼ぎまくれてねえんだよみたいな思いがあって。

当時はフリースタイルダンジョン全盛期だったんですけど、その頃ってラッパーは「テレビに出れるラッパーとしてやっていくのか、それとも俺はストリートだって尖っていくのか」みたいな選択を迫られてたと思うんですよ。
で、見てる人もプレイヤーもどちらか極端な方向を望んでる気がしてた。
でも俺はそうじゃねえぞって。
もうちょっと微妙なニュアンス、極端じゃない立ち位置にいたいし、それならではの良さがあると思う。
俺はもうちょっと繊細なんだぞって思いが表れてるのが「TV・Street どっちにいたいってわけでもないが 浅はかで馬鹿なやつがしたがるカテゴライズ」ってリリックです。
 

─『CURE』以降音楽一本にはなったけど、また別の葛藤もあったと。
 
NF Zessho:
食えるようにはなったんですけど、自分が思ってるより反応が薄いなみたいな葛藤はありますね。
結局今も常に動き回ってないと生活回らないですし。
俺は結構ゴールドチェーンに対してコンプレックスみたいなものがあるんですけど、
24kとは言わずとも、俺が18kのオリジナルのチェーンを買って生活も余裕だぜ、くらいになればひとつ基準クリアかなって感じです。
でもお金稼ぎはプロモーションの話で曲作りの云々とはまた別の話だと思うので、しばらくこんな感じでのらりくらりやっていこうかなと思ってます。

まぁでもそうは言ってもある程度色々余裕が出てくればまた見える景色も変わってくると思うので、そこは今後リリックにも影響が出てくると思いますね。
とりあえず今は音楽が楽しいのでハングリーにやれてます。
 
 
─ライブでやってる曲を中心に集める中で、色々NF Zesshoさんの思いが詰まった作品になってますね。
 
NF Zessho:
やっぱりアルバムとかはアルバムと言う音楽作品として腰を据えて作るものですけど、
『RYNO』に関してはライブでやったりするって現実感が先にあった作品なので。
ライブを思い返すと、やっぱり毎回来てくれる人達とかがいるんですよ、仲間も含めて。
今回はそういう人たちが特に喜んでくれると良いなと思って制作しました。
まぁ後は音楽的な実験というか、自分の現状のラップスキルを試す感じもありましたね。
 

─そうした思いをリリックに込めつつ、あまりラップとしてナーバスというか感情的にならず、あくまでエッジが効いてるっていうのはNF Zesshoさんの特徴ですね。
 
NF Zessho:
やっぱり「良い言葉」と「良いラップのリリック」のは全然違うと思うんで。
『Beyond the Moon Shine』や『CURE』にしてもそうなんですけど、良い話の曲だったとしても、良いラップのリリックは徹底出来てなかったと思う。
最近になってカッコ良いラップのリリックの概念を理解し始めた。
カッコ良いラップにはカッコ良い(強度の高い)リリックが必要だと思った。
あくまでカッコ良くあることを最優先に、音だけじゃなくリリックも求め始めた感じです。


ギャングスタラップ文化の影響について


─”Go Fuck Yourself”について教えて下さい。この曲は唯一外部プロデュースとして盟友・Yoshinumaを招いてます。この辺りの狙いは?
 
NF Zessho:
大前提として、元々曲自体はライブで既にやってたっていうのはあります。
で、元々は俺の1st『Natural Freaks』に入ってる”革命前夜”って曲があってこれがYoshinumaプロデュースです。
実はそのトラックを俺が滅茶苦茶ピッチを落としたのが”Go Fuck Yourself”になってるっていう。
だから正確に言うとYoshinumaのプロデュースというよりは、元ビートを提供してくれたって位置付けになります。
 

─あえて過去曲のピッチを落とすという手法を取った理由は?
 
NF Zessho:
Chopped & Screwed文化の影響ですね。
ここ数年でギャングスタラップに詳しい友達と知り合ってかなり影響を受けてて。
その中でスクリューを知って、「ピッチ下げるだけでこんなに曲が良くなることってあるんだ」って衝撃を受けた。
で、自分の曲のピッチ下げたりして聞いてたんですけど笑、その一環で”Go Fuck Yourself”も思い付いてやった感じです。
 
自分自身かなり好きになったんで、色々ラップとかも影響受けてたりはするかもしんないです。
 

─じゃあもしかすると今後NF Zesshoさんの作品でChopped & Screwed版が出る可能性もある?笑
 
NF Zessho:
いやーそれはちょっと恐れ多いです笑
G文化をリスペクトしてるので、安易に手を出すのもナンセンスな気がしますね。
あとはChopped & Screwedは「誰がDJやってんのか」も結構重要な気がするので、今後そういうご縁があれば考えるかもしれないですね。
でもなー…単純に俺がギャングじゃないので、やんないかもです笑
 

─日本じゃ中々Chopped & Screwed版はないですしね。最近だと2020年8月に出たD-SETO & KVY DIXGO『UNDERGROUND TAPE VOLUME 1』くらいかも。




NF Zessho:
日本の今のメイン層にも届く場所でああいう音楽をやってるのはD-SETO氏くらいかもしれないですね。
会ったことはないんですけど、滅茶苦茶Gに対して愛が深いんだろうなって思うので、いつか会った際には話してみたいですね。
あとD-SETOは、名前も遊戯王の「海場瀬人」から取ってると思うし、
MVの冒頭にでるレーベルのロゴもレア社っていうドンキーコングとかバンジョーとカズーイの大冒険を作ってた会社のロゴのオマージュ。
好きなものが自分と近い気がしてて勝手にその辺でフィールしちゃってます。
 
ただ自分はそのG好きの友達や、恐らくD-SETO氏もそうだと思うのですが、
本当にGが好きでずっと聞いてきたような人達よりも愛も知識量も足りてないと思うんで、共演したりするのは恐れ多いかもしれないです。
やるならそういうギークな人たちも唸らせるとこまで言ってからじゃないとな、って思います。
 

─G-Funkとかもやりたい思いはありますか?
 
NF Zessho:
あー、G-Funkそのものというより、そういうテイストの曲はアリかもしれないですね。
でも日本でクオリティの高いG-Funkのビートだったら、DJ PMX氏くらいな気が…。
現実的に叶えられるかは別として、一つの夢として人生で一回くらいDJ PMX氏のビートで曲作れたら良いなぁとは漠然と思ったりするかもですね。
 
まぁでもGはラップのスキルとかはあんまり関係なくて、ストリート的な意味合いでどこの誰がやってんだよって重要だと思うんで…みたいな感じですね。
 
でもやっぱり俺が日本のG-Funkなビートメイカーを知らないって言うのが一番壁なんで、
もしいて我こそはって人がいたら連絡下さい笑
 

─PRKS9の主旨もそこにありますが、絶対どこかにくすぶってる人はいると思うんですよね。
 良いG-Funkのビート出してても埋もれ続けて「なんでだよ」って人はいる気がします。
 
NF Zessho:
そう、絶対どこかに潜ってますよね。
地方に呼ばれてライブしに行ったりしても、全然名前の知らない人で滅茶苦茶カッコ良い、みたいなのざらにいますからね。
特にDJとかはカッコ良い人が多い気がする。


─先ほども話に出た”Diegos”については、更に元々ディエゴの綴りは「Diego」ですよね。ここを複数形にした訳は?
 
NF Zessho:
複数形になってるのは、俺に加えて仲間たちのことですね。
自分は『CURE』出したすぐ後なので、今から2年前くらいに東京に出てきたんですけど、そこでOll Korrectってパーティに出るようになって。
そこに出てるMCやDJはほぼ全員同い年なんですけど、なんかめちゃくちゃ気が合うんですよ笑
自分はこれまで仲の良い同い年の奴が自分と同じバイブスで音楽をやってる、みたいな経験がなかったので、めちゃくちゃ新鮮なんですよ。
なので、最近「俺はこいつらと上がってくぜ」みたいな思いが出てきてるのかもしれないです。
 
Oll Korrect自体は6年くらい続いてるパーティで、自分も2ndアルバム『Beyond the MoonShine』を出した頃から2回くらいゲストとして呼んでもらってて。
東京に引っ越してからレギュラーで呼んでもらうようになったんですけど、なのでまあ精々いるのは2年くらい。
でも比較的新しく入ったからこそ、これまでの関係性とか悩んでた部分とかの空気読まず、どんどん提案して作っていって、みたいな役回りになった感じです。
 

─なお”Diegos”のREMIX版も先日配信されて、こちらにはChico Carlitoさんが客演しています。この人選やきっかけは?
 
NF Zessho:
このREMIXが出来たきっかけは、チコがインスタのストーリーにこの曲を上げてくれてたんですよ。
それでメッセージのやり取りしてたら、この曲のインストちょうだいよって言われたんで送ってみたら、翌日とかにもうあのヴァースが送られてきて。
しかもあのVerseだったんで、熱量ヤバいなと思って。で、せっかく出来たからってことでリリースした感じです。
なので何か俺から依頼したとかっていうよりは、流れで出来上がった感じですね。
 
ちなみにチコとガッツリ知り合ったきっかけは確か去年大阪であったAwich, 唾奇の2マンライブです。
自分もその日別のライブでたまたま大阪にいたんです。
で、翌日唾奇くんからだったかhokutoさんからだったか忘れたけど、
とにかく「大阪いるならせっかくだし客演してってよ~」みたいに言われて。
そのライブの楽屋で確か初めてまともに喋った感じですね。
 
そのあとライブの打ち上げにも一緒に行ったんですけど、そこで俺が卵かけご飯食べてて。
で、ああいうのって卵を運んでくる皿と、中身をかき混ぜる用の皿と2枚出てくるじゃないですか。
俺はその時卵を運んできた皿にそのまま中身を落としてかき混ぜちゃったんですけど、
そしたらそれを見たチコが「それ良くないよ、病気になっちゃうよ!」ってかなりガチ目に言ってきて。
その日初めて話したくらいだったんですけど、普通初対面の人にそんなこと言わないじゃないですか?笑
でも冷静に考えるとそのグイグイ来る理由って俺の体を気遣ってのことなわけで。
だから優しい奴なんだろうなってその時わかって好感持てましたね。
 
俺は割と人見知りする方で、初対面の相手とはうまくいかないことの方がほとんどなんですけど、
チコが壁をぶち破ってくれてすんなり打ち解けられたっていう、自分的に印象深い思い出です。
んで、そこからゆるーく付き合いが続いてる感じです。


今後の活動について


─最後に、今後の活動について教えて下さい。元々Aru-2との『AKIRA』はNF Zesshoさんの4thアルバムを作る中でスピンアウトして出来た作品ですが、そうなると次に出るのはその4thということになりますか?
 
NF Zessho:
いや、それがちょっとわからないです。
元々そのつもりだったんですけど、新型コロナウイルスで状況が変わったんで。
いま家にいる中でみんな曲作りまくって、ガンガンリリースしてるじゃないですか。
そんな流れの早い時に出してもリリース情報や世間のニュースに埋もれちゃってて結局後からリリースされてたことに気付く、みたいなことが最近自分の中で多々あるんで。
そういう状況で正攻法にリリースしてもアレなんで、諸々のリリースを重ねながら、ちょっと普通じゃないプロモーションも掛けて出して行こうかなと思ってるところです。


─というと?
 
NF Zessho:
まずはOll Korrectに出てる仲間で作品を出します。
9月の26日に、互いの曲でREMIXしあったり、ラップし合ったりするアルバムを出します。
それから10月にOll Korrect全員で作った作品というかプロジェクトが表に出ます。
Oll Korrect関連のラッパー、プロデューサーで纏めて、ミックスもマスタリングも、映像制作もビジュアル撮影も全部知ってる仲間だけでやる作品です。
自分は全体のプロデュースをしてるんですけど、かなり感慨深い動きですね。
もっと詳しく言いたいところですが、今はまだ中身はまだ言えないです。楽しみにしててほしいです。
 
あとは4thとは別に、人との共演作もいくつか出る予定です。
それこそChico Carlitoとのシングルみたいに、「そことそこが共演するんだ」みたいに面白がってくれるといいなぁと思ってます。
こうした動きと併せて4thも動いてるって感じですね。
とは言えモノとしてはほぼ完成してます。
…でもこういうのはほぼ出来てると思ってからがまた長いので、、気長にやります笑
 
あとは、それに加えて5thのアルバムコンセプトも作り始めてる感じです。
こうした一連の動きを2年くらいかけて全部表に出していって、っていうイメージですね。
 
こういうのを考えてる中で、今回の『RYNO』みたいに思いついてババっと出す、みたいな作品も合間合間に入ってくる感じになると思います。
そういう動きを考えていくと、やっぱり資金が必要だ、もっと稼ぎたいってなるっすね。
やっぱりやろうとする規模がデカくなると必要な金も増えるんで。
それもあって最近は、もっとFamousになりたい、金が欲しいっていう欲求が割とはっきり出てきました。


─先日MVも出たさとうもか “empty dream”もNF Zesshoさんのプロデュースでした。
 ラッパー以外へのプロデュースワークみたいなのも、最近の目的からの一環なんでしょうか。



 
NF Zessho:
そうですね。ただ”empty dream”に関しては、仕事を振ってもらって、その相手がもかちゃんだったからやったってところが大きいんで。
人によるので特にプロデュースワーク自体を拡大していく、みたいな感じでは今はないですね。
でも良い女性シンガーがいればプロデュースでも共演でもやってみたいですけど。
 
まあ今はどっちかと言うと外に出てくよりも、身内を固めたいなって感じです。
自分はAWOL Cartelっていう、サトウユウヤやRAITAMENがいるクルーにもいるんですけど、その辺とも制作で動いてますし、
Oll KorrectにもNyQuilCapsってグループがいて、1stと2ndは俺もプロデュースしたりあーだこーだ口出ししたりしたんですけど、
彼らも含めてOll Korrectの皆とこれからもっと上がっていきたいなとも思うし。
 
昔はあのラッパーとやってみたい、みたいな欲求がありましたけど、もう今はほとんど無くて。
今はどっちかと言うと自分で土を耕して、種蒔いて育てていく、みたいなところにフォーカスして今後を組み立ててますね。
その組み立ても考えるのも楽しいんで、今後の動き方は結構見えてるつもりでいます。
新型コロナウイルスの影響でこれまでの前提・当たり前が変わってる中で、まだ誰も正解と言えるような動き方を提示出来てないと思うので、
色々新しい試みをしていけたらと思ってます。
頑張って楽しませるので自分のこれからの動向をチェックして頂けると幸いです。
…まぁ、そんなこと言いつつも結局自分が一番楽しみたいというのが本音なんですけど笑


以上 (2020/09/17)
───

NF Zessho『RYNO』 (2020/06/16)

1.Vibin’(Riot!!)
2.S.O.F(Original)
3.Overcoat Freestyle
4.Supreme Playa
5.Go Fuck Youself
6.Diegos




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